ハワイの「ABCストア」米国本土にも店を出す狙い。創業した日系家族に受け継がれてきた経営哲学
ハワイを代表するコンビニエンスストアチェーン「ABCストア」は、100年以上前に、岡山県からハワイに渡った移民の夫妻が始めた小さな商店が発祥だ。現在2代目の社長兼CEOを務めるのは日系3世のポール・コササさん。ファミリービジネスとして受け継がれた「ABCストア」には、どんな組織風土、文化が育まれてきたのだろうか。前後編の後編をお届けする。 【写真】オリジナルTシャツなどABCストアの定番商品。テイクアウトできるうどんも。 ■日系移民の習慣を今も受け継いでいる 前編(ハワイ「ABCストア」誕生の裏にある日系人の物語)ではABCストア誕生の歴史を紐解いてきた。今年60周年を迎えるABCストアを受け継いだポールさんは、「祖父母や両親から受け継いだABCストアの文化は、まるでタイムワープの中にいるようだ」という。
「世界は文化的に変化しているけれど、ハワイにいる私たちは、世界の変化から隔離されてきた。沖縄のフェスティバルなど、伝統的なものをハワイでは祝い続けているからね。日本の若い世代はその伝統に触れる機会が少なくなっているだろう。でも、ハワイではまだそれらが守られている。だからハワイの文化は(日本の)上の世代のものと似ているところがあると思う」 それは企業の経営思想においても、似たようなことがいえる。 「その昔、ハワイに定住した日系移民の多くは、店を構えるにしろ、問屋を営むにしろ、ネクタイを締めていたよ。そういう習慣があった。だから私たち(ABCストアの管理職)はそれを今も守り続けている」
「終身雇用も日本の企業がやってきたもので、私の両親も同じような文化を採用した。ABCで懸命に働けば、一生の仕事がある。退職後の生活にも役立つだろう。その哲学はほとんどの従業員に根付いてきた」といい、こう続けた。 「だが今、若い世代にはそれが理解できないから難しいんだ。そのために私たちは多くの人材を失い、多くの人を雇う。1週間働いただけで連絡もなく、こなくなることもある。残念だが、そのうち1人が残ってくれて、いい会社だと理解し、そして定着するのが現状だ」