蔵元、海外アピールに期待 「国内でも盛り上がって」 伝統的酒造り、無形文化遺産登録決定
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産への登録が決定した「伝統的酒造り」。 【写真】「こうじぶた」を使い、こうじを造る泉橋酒造の蔵人 日本酒などを製造・販売する「泉橋酒造」(神奈川県海老名市)の蔵元は「海外へのアピールになる。日本国内でも盛り上がるとうれしい」と喜んだ。 寒さが厳しくなり始めた11月中旬。田園風景が見渡せる同社では、早朝から蔵人(くらびと)らが日本酒の仕込みに当たっていた。江戸時代の1857年創業の同社は「こうじぶた」と呼ばれる、杉でできた小箱を使用する伝統的な製法で、日本酒造りに欠かせないこうじを造っている。 こだわりは製法に限らない。「酒造りは米作りから」をモットーとし、酒米の一部を自社栽培する。6代目蔵元の橋場友一さん(56)によると、米作りや精米を自前で行う酒蔵は全国でも珍しいという。 使用する酒米の約9割は地元・神奈川県産。橋場さんは「関わってくれている農家の皆さんにとっても良いニュースになったと思う」と笑顔を見せた。 ただ、日本酒を取り巻く環境は厳しい。国内では、飲酒習慣の変化などで酒類全体の消費量が減っており、国税庁によると、日本酒の国内出荷量も減少傾向にある。橋場さんは登録決定を「海外に日本酒をアピールする時の後押しになる」とした上で、「日本の皆さんにも、改めて魅力に気付いてもらうきっかけになれば」と期待した。