大東駿介×浅野和之 日本初演『What If If Only―もしも もしせめて』は夜、寝る前にふと思い出す芝居
明日を生き抜く一歩を感じる作品
――大東さんが演じるのは“某氏”、浅野さんは“未来”そして“現在”を演じます。役柄の解釈にしても難解ですね。 浅野 大東君のほうは、生きている人ですね(笑)。 大東 生きている人ですけど、おそらく大切な人が亡くなり、悲しみの中にいて先に進めずにいる人です。 浅野 私は別個の人物のように見えるけれど、本当はこの某氏の中に存在している人物なのだろうなと。最初は未来として、後に現在として彼に相対し、導いていく。要するに、大切な人を亡くした喪失感の中で、自問自答したり苦しんだりしているところから抜け出す手立てと言うのかな。結局は、彼自身が自分で抜け出そうとしているから、私が現れたんだと思うんだけどね。 大東 その苦しみの視点が、僕という主観から飛躍して突拍子もない世界情勢の話になるわけではなく、僕らと同じように日々大切な人を思いやったり、ニュースで社会のことを知ったりする、そうした彼の感性の中、情報の中で成立しているところがキャリル・チャーチル素晴らしいな!と。読み解くほどに、明日を生き抜く一歩を感じるんです。辛いこと、悲しいことがあっても、それでも生きていく、そのことを恐ろしくも温かく導いている戯曲だなと思いますね。今、立ち稽古が始まったばかりですけど、浅野さんを見て、自分アカンなと思いました。初日の立ち稽古で、次から次へとアイデアが体から出て来る先輩の姿を見て、自分ももっともっと頭も体も動かさなきゃ!と痛感しました。 浅野 いやいや僕もね、大東君とは初めてご一緒するんですけど、その熱量と、言葉の豊かさと、僕にはないものだなと圧倒されています。若さもあるんだろうけど、僕若い時でもこんなすごいエネルギーが、情熱があったかなと思っちゃうぐらい(笑)。全然タイプが違うので、一緒にやっていてすごく面白いし、勉強になりますよ。今のまま歳をとっちゃいけないなと思った(笑)。 大東 こちらこそですよ! 当たり前ですけど、こちらこそ勉強になります。