Gamble Loom、ボカ学、CDs……ボカロシーン最前線を担う新世代クリエイターの“群の才能”
原口沙輔を中心とした音楽の枠組みに囚われない集団・CDs
■CDs 最後に紹介するのは、今年8月に開催された『YouTube Music Weekend 8.0 supported by docomo』への出演も話題を呼んだCDs。今やシーンを超えた若手クリエイターの筆頭株・原口沙輔を首謀者とする集団だ。 公式YouTubeアカウントにある投稿動画から推測するに、クルー名は「creative discontrol structure」の頭文字が由来の様子。元々このCDsという集団は、原口がある日突如SNS上にて招待リンクを公開したDiscordサーバーを発端としている。現在も当該のサーバーへはCDsの各種SNSから誰でも自由に参加申請を送れるため、チームの人数自体は数千人単位と非常に大所帯。その中でも様々な活動へ参加するのは、原口ほかフロクロ、なみぐる、読谷あかね、マサラダなど、シーンでも独創的かつ前衛的な作品で評価を得るボカロPが中心となっている。 現状チームでの公な活動頻度はそこまで高くないものの、総じて非常に実験的なクリエイションが本クルーの最たる特徴だ。その創作はVOCALOID、さらに言えば“音楽”の枠組みにも留まらない。環境音や人の声といったあらゆる“音”までも制作の素材とし、かつサーバー内のクリエイター陣で映像/演出制作までも分担する。その活動からは、いい意味で非常に奔放な創作スタイルが見て取れるだろう。ゆえに聞き手はもちろん、作り手すらも何が飛び出すかわからないーーまさに“制御不能”な一面が、大勢の興味を強く惹きつける集団ともなっている。 こうして見るとそれぞれが非常に明確な作品群の個性、あるいは創作活動へのスタンスを持つ各ボーカロイドクルー。その違いを楽しんだり、動向を追うこともまたシーンの楽しみ方のひとつになりつつある。 従来は大勢のボカロPの“個の才能”を主として、様々な流行やトレンドを作ってきたボカロシーン。だが、そんなムーブメントを“群の才能”で起こすという選択肢も、今後はよりスタンダードになっていくかもしれない。
曽我美なつめ