Gamble Loom、ボカ学、CDs……ボカロシーン最前線を担う新世代クリエイターの“群の才能”
これまで大勢の才ある人々を発掘してきたVOCALOIDシーンには、今なお文字通り星の数ほど楽曲の作り手となるボカロPがいる。だが過去には彼らが様々な形で徒党を組み、それが時にムーブメント形成にも一役買う潮流があったのをご存知だろうか。 【写真】リアルとバーチャルの垣根を超え、ステージ上で共演を果たしたAdoと初音ミク その源流となる存在が、ボカロPユニット・estlabo。2010年末に結成された本ユニットの構成メンバーには、米津玄師=ハチ、wowaka、古川本舗、そしてtoku=とくPという、今考えてもあまりにも豪華な面々が揃っている。 周知の通り、同時期にシーンは一度大きなピークを迎えた後、2020年前後に再び盛り上がりを見せる。この再興期に頭角を現し始めたボカロP陣によるクルーが、Ayase、syudou、すりぃ、ツミキらを筆頭とするDREAMERSである。結果としてのちに彼らは方々で八面六臂の活躍を見せた。 これまでも度々シーン内で起こっていた、ボカロPたちによるクリエイター集団の形成。特に2020年代突入以降その動きはより活発になっており、それは現在の様々なムーブメントの波及にも繋がっている。 そこで今回は、今シーンでも注目株のクリエイターを多数擁するボーカロイドクルーを3組ピックアップ。在籍するボカロPやその多彩な活動から、直近のシーン動向を感じ取ってもらえたら嬉しい。 ■Gamble Loom 最初に紹介するのは、ボーカロイドプロデューサークルーとして2022年8月に発足したGamble Loom。通称・GaLの名で活動を始めた彼らは、「新世代ボカロPたちが寄ってたかっておもしろいことを画策してゆく今までにないスタンスのクルー」をコンセプトとしている。 現在は14名が所属しており、創始者の匿名ゲルマと大漠波新をはじめ、A4。やRED、⌘ハイノミやキツネリほか、2020年代以降に活動を始めた新進気鋭のボカロPも多く在籍。個々人の楽曲やクルー全体で取り組むコンテンツにおいて、VOCALOIDカルチャーのみに留まらない、今の若年層の時代トレンドを反映したスタイリッシュなクリエイションが印象的なチームでもある。 またヒロモト ヒライシンやmiruをはじめ、作詞作曲のみに限らない音楽制作スキル、特に楽器演奏スキルを持つメンバーが多い点も本クルーの強みだろう。そのためクルー内メンバーが手掛けた楽曲の演奏サポートを他のメンバーが担当していることも多く、それもまたチームの興盛に一役買っている印象だ。 ほかにも、VOCALOIDシーンを中心とした『超ボカニコ』などの各種イベントへのDJ出演や多方面のカルチャーにおける楽曲提供、あるいは自身でシンガーソングライターとして活動する者も。それぞれが興味の赴くまま、創作を各々自由に行う集団という活動傾向が見て取れる。 ■私立ボカロP学園初等部 一方で、上記のGaLとも近しい時期に活動を始めた“ボカ学”こと私立ボカロP学園初等部は、ボカロP・Shu主催の合同サークルとしての名義が公の場における当初の位置づけだった。シーン内で定期的に開催される同人音源即売会にて、彼らが初めて音源などの発売をを行ったのが2022年4月。そこから現在に至るまで、着実にその知名度を拡大させている。 現在“生徒”として名を連ねるボカロPは15名。Shuを筆頭に音無あふや吉田夜世、Sohbana、ど~ぱみんや夏山よつぎなど、現在進行形でボカロシーンを盛り上げているメンバーも多く所属している。 彼らの場合はさながら“ニコニコ動画ライク”な、VOCALOIDカルチャーを純粋培養したムードを色濃く反映するクリエイションが大きな特徴だ。現在はインターネット内に留まらず、クラブイベントほかリアルな場での活動も積極的に推進。クルー出演時の写真/映像のSNS掲載も推奨しており、従来ボカロPにとってはともすれば禁忌だった“素顔の公開を厭わないメンバー”が多いのもほかに比べユニークな点と言える。 一見すれば初期の同人サークルという形から、活動形式も大きく変化したように見えるボカ学。しかし“インターネットカルチャーを用いて遊ぶリアルの場”を主戦場とする、その本質はクルーの軸として変わらず存在し続けているのだろう。