元自衛官の五ノ井里奈さん「声を上げなくてもいい社会に」 組織に立ち向かった経験、京都女子大で語る
京都女子大の公開講座「社会変革の担い手となる―性暴力のない社会をめざして」が19日、京都市東山区の同大学で開かれた。自衛隊での性被害を告発した元自衛官の五ノ井里奈さん(25)が、自身の体験を踏まえ「声を上げなくてもいい社会になってほしい」と語った。 【写真】五ノ井さんに米「勇気ある女性賞」
宮城県東松島市出身の五ノ井さんは東日本大震災で被災し、災害派遣で訪れた女性自衛官との出会いがきっかけで自衛隊を志した。「いつか私もこの女性自衛官のように、世のため人のためになって働きたい」と決意し、2020年4月に入隊したが、最初に配属された部隊で上司の男性自衛官数人から性暴力を受けた。
五ノ井さんだけでなく他の女性自衛官も被害に遭っていたといい「同じ思いをしてほしくない」との思いで調査や謝罪を求めたが、状況は変わらず22年に退職した。
退職後「声を上げ、組織に立ち向かわなければいけない」と決意し、性被害を実名で告発。訴えは防衛省の特別防衛監察につながり、上司だった元自衛官3人は強制わいせつ罪で有罪判決を受けた。
五ノ井さんは「声を上げても上げなくてもいい。自分の心に従ってほしい」と、変化を恐れず、歩み続ける勇気と覚悟を持つ大切さを強調した。
学生を交えたパネル討論では会場からの質問にも答えた。性被害の訴えに対して誹謗(ひぼう)中傷が起きる現状について問われると、「気にするだけ無駄だと思ったので、自分がぶれずに信じることをやっていた」と振り返った。