「僕が行かなきゃ誰が行くんだ」家路を急ぐ『野球少年』川で「助けて」と叫ぶ女性見つけとっさの判断…鍛えた足腰支えに引っ張り上げた『命』
「僕が行かなきゃ誰が行くんだ…」。川に転落した女性を救った“野球少年”に感謝状です。 9月4日午後3時。「今日はお父さんと甲子園に阪神タイガースの試合を見に行かないと」。大阪市立中之島小中一貫校の小学6年・清田錬玄くん(12)は授業を終えて学校を飛び出し、一人家路を急いでいた。 すると突然、『ドボン』と何かが落ちる音がした。後ろを振り返ると、川に女性(30代)が転落していた。なんとか顔だけを水面から出して、岸に手を掴んで「助けて」と叫んでいる。 「これはマズい」。周りを見渡すと、近くにいる人は自分だけ。そこで覚悟を決めた。「僕が行かなきゃ誰が行くんだ…」。 実は錬玄くん、小学3年の頃から野球を始め、ピッチャーを務める“野球少年”。日々の練習の成果で、体の力には人一倍の自信があった。
すぐに、高さ1メートルほどの柵を飛び越え川へ。幸い、当時川の水位は低く、少し川に足をつけるだけで女性の近くまでたどり着けた。 そして、女性の手を掴んで力を振り絞り、思いっきり引っ張り上げた。想定以上に重かったというが、ピッチャーで投げ込んだ足腰の力が最後の支えになってくれた。女性の命に別条はなく、無事に救助された。 錬玄くんは、パトロールで通りがかった警察官に後を託し、足早に家へ帰って甲子園へと向かった。その日、阪神は快勝したという。 10月15日、大阪府警天満署は「人命救助に大きく貢献した」として錬玄くんに感謝状を贈呈した。同署の吉村公一署長も「大人顔負けの体力と勇気だった」と手放しで賞賛した。 錬玄くんは感謝状について、「もらえたことを光栄に思います」としたうえで、「たまたま引き上げることができたが、自分自身も危険な場合がある。まずは周囲の大人に声をかけたり、110番通報した方が良い」と呼び掛けた。 未来の夢はプロ野球選手だという錬玄くん。「これからも人の役に立ちたい」と話す目は、未来への希望に満ちていた。