【マイナビ閃光ライオット2024レポート】admiresのグランプリ受賞で幕を閉じた、10代アーティスト限定の音楽フェス。ファイナリスト10組の熱演を振り返る
■10代アーティスト限定の音楽フェス。応募総数3078組 10代アーティスト限定の音楽フェス『マイナビ 閃光ライオット2024 produced by SCHOOL OF LOCK!』が8月7日にZepp DiverCity(TOKYO)で開催され、今年のグランプリは宮城発の3人組、admiresが獲得する結果となった。今回、応募総数3078組の中から勝ち残ったファイナリストたちの熱血パフォーマンスを詳細レポートで追いかけ、当日の熱狂と興奮をここにお伝えしたい。お世辞でも何でもなく、未知の可能性を秘めた10代アーティストのレベルの高さに本当に驚かされるばかりであった。 【画像】グランプリ受賞のadmires(『マイナビ 閃光ライオット2024 produced by SCHOOL OF LOCK!』より) ■オープニング・アクトは昨年グランプリを受賞した北海道発の3人組、でかくてまるい。 次世代を担うであろう、若者たちの熱演に時間を忘れるほどステージに見入ってしまった。10代アーティスト限定の音楽フェス『マイナビ 閃光ライオット2024 produced by SCHOOL OF LOCK!』が8月7日にZepp DiverCity(TOKYO)にて開催。オープニング・アクトは昨年グランプリを受賞した北海道発の3人組、でかくてまるい。「国道」、「36号線」と熱さ迸る歌声と演奏を叩きつける彼ら。「今日出るバンド、俺たちよりもかっこ良く歌ってみろよ!」と米田拳悟(Vo/Gu)と檄を飛ばし、堂々たるパフォーマンスで場を盛り上げた。 それから応援アンバサダーを務める豊嶋花が「この物語は全員が主人公!」と開会宣言した後、こもり校長&COCO教頭から今日の特別審査員であるASIAN KUNG-FU GENERATIONの山田貴洋、Galileo Galileiの尾崎雄貴&岩井郁人、グランジの遠山大輔(『SCHOOL OF LOCK!』元校長)、ラッパーのCHICO CARLITOが紹介され、ここから遂に本編へ。応募総数3078組から勝ち上がった10組のアーティストが技量とスキルをぶつけ合い、優勝を競い合う。 ■ヒリヒリとした歌声にハートフルな歌詞、プライドの高い深夜のコンビニアルバイト ファイナリト10組のトップを飾ったのは千葉発の4人組、プライドの高い深夜のコンビニアルバイト。軽快なギター・フレーズと共に「死ぬまで」で幕を開けると、前のめりの演奏で観客に訴えかける。厚みのあるコーラスに耳を奪われる一方、ポエトリー風に語りかけるパートもあったりと、聴かせ所の多い1曲だった。松本力丸(Vo/Gu)は「僕はあいつらのことも背負って!」とオーディションで出会った仲間たちに思いを馳せ、「焦燥」へ。ヒリヒリした歌声を聴いて、一瞬で胸倉を掴まれる思いだった。けれど、その根っこにはハートフルな歌詞が宿り、ただ熱いだけではなく、温かさが感じられるのも彼らの魅力である。ラストを飾る「青紫」では“何もできない僕を優しく包んで 笑ってくれたんだ”の歌詞を観客に歌わせ、心の距離をグッと縮めることにも成功していた。 ■魂の叫びとも言うべきスケールの大きなエモーションをブチまけた、LaDybug 「ワン、ツー、スリー、フォー!」とカウントを告げ、勢いよくスタートを切ったのは広島発の4人組、LaDybug。1曲目「KAWAII BABY☆」から捲し立てるような歌声で度肝を抜かれた。銀杏BOYZ~東京初期衝動に通じる“ライオット”感は、今回のラインナップの中でも異色の尖り具合である。「初めてやる曲…この『閃光ライオット』のために作った曲!」とMCを挟み、「ばくだんの詩」をここでプレイ。「ばくだん」と何度も連呼する歌詞は、心のしこりを叩き壊してくれる清々しさがあり、聴く者にある種の爽快感をもたらしてくれた。「私たち1曲1曲短いのでMCで繋ぎたいけど、ヘタッピだから、歌で伝える。誰かに刺さってくれたらいい。かまします!」とオカダ(Vo/Gu)。ラスト曲「PUNK博士」においては、魂の叫びとも言うべきスケールの大きなエモーションをブチまけてくれた。 ■クールで“青い炎”と形容したくなる音楽性と起伏豊かな曲展開がクセになる、皆川溺 次はボカロP出身のシンガーソングライター、皆川溺(みながわおぼれ)がバンド編成にてステージに立つ。彼の佇まいはどこかクールだ。それは音楽性にも表れており、ポスト・ロックを基調にした繊細なフレーズや多彩なリズムでフロアを盛り上げていった。“赤い炎”というより“青い炎”と形容したくなる音楽性だ。「遠泳」から観客を静かに揺らし、曲が進むにつれて、螺旋階段を駆け上がるように演奏はスパーク。卓越したテクニックを用い、起伏豊かな曲展開は聴き応え十分である。また、情景が脳裏に浮かぶショート曲「ベージュ」では美しいメロディを前面に出し、じっくり聴かせる曲も素晴らしかった。一筋縄ではいかない個性の強さがクセになるアーティストである。 ■鮮烈な歌唱力とルーパーを使用し音を重ね、曲をカラフルに変貌させる、Yukky 続いて愛知在住のシンガーソングライター、Yukky。彼はエド・シーランがルーパー(多重録音できる機材)を使う姿に触発され、自らもルーパーを使用した弾き語りスタイルを取っている。演奏中も徐々に音を重ね、曲はどんどんカラフルに変貌を遂げていく。そのプロセスを堪能するだけでも実に楽しい。その上で、鮮烈な印象を与えたのはYukkyの歌唱力だろう。16歳とはにわかに信じがたいソウルフルな声色は大人びた成熟度を感じさせる。それを物語るように、オープナーの「蜃気楼」から観客は彼の歌に聴き入っていた。さらに「1秒の今と青春」におけるストレートなメロディも絶品。「初めてこの曲を東京で演奏する」と前置きして、最後は「From Tokyo」を披露。ここでは開放感溢れる声色を響かせ、明るい曲調でフロアを焚きつける様も印象的だった。 ■誠実な人柄が滲み出たサウンドと透き通る美声を高らかに歌い上げる、halogen 2年連続でファイナルに駒を進めた宮城発の4人組、halogenの出番が来た。「Masterpiece」が始まるや、メンバー全員の出音がきっちり揃い、誠実な人柄が滲み出たサウンドと言えるだろう。昨年は小野(Vo/Gu)の声が出なくなるアクシデントに見舞われたが、今年は大きなトラブルはなく、透き通る美声を高らかに歌い上げる。「透明な鎧」では「皆さんも一緒に歌ってください!」と呼びかけ、ウォー!ウォー!の合唱を観客から引き出していた。現在バンド・メンバーはそれぞれ大学に通い、遠距離での活動を余儀なくされている。そんな境遇を加味した「4」はとりわけエモーショナルに響いた。分厚い2本のギター、スラップ・ベース、タイトなドラムが合わさり、Zepp DiverCity(TOKYO)という大バコに相応しい演奏で一皮も二皮を剥けた成長ぶりを見せてくれた。 ■マイク一本で勝ち上がった実力は確かな唯一のラップ・アーティスト、LOM 開口一番に「『閃光ライオット』、楽しんで行こうぜ!」と声をかけたのは茨城発のラッパー、LOM。バンド/シンガーソングライターが集まる中で唯一のラップ・アーティストだが、マイク一本で勝ち上がった彼の実力は確かなものだった。ここから天高く飛び立つんだ!という前向きな姿勢を打ち出した「FLY」でショウはスタート。「LOM!」とコール&レスポンスを観客に促し、すかさず「18AGE」へ。これは8月14日リリースの5曲入り配信EP『DREAM MAKER18』の1曲目を飾る楽曲だ。軽快なラップで攻めながら、「エブリバディ、ハンズアップ!」と観客を煽っていく。自信漲るステージングでこちらの意識を釘付けにした後、ラップと歌メロを行き来する甘美なラヴソング「WEEK」で幕を閉じた。今後の成長ぶりに期待したくなる好アクトと言っておきたい。 ■観客の気分を高揚させる術を心得ている「5人組エンタメ集団」、Crazycastle そして、ここから沖縄のアーティストが2組続く。まずは「5人組エンタメ集団」と銘打ったCrazycastleが登場。紹介ムービーの中で「世界に届けるエンターテイメントをやる!」、「エンタメだから何でも光らせちゃう!」という文字が踊る。その言葉通りに楽器の周りに電飾を付け、演奏前には軽い踊りを披露したりと、観客の気分を高揚させる術を心得ている。ライブは「GIFT」で始まり、親しみやすいメロディを会場の四隅に染み渡らせていく。それから「No.228~君色の夜空~」に進むと、観客は自然と手を左右に振っていた。またバンド側はハンドクラップを求め、ステージとフロアの境目を無にする温かなムードを作り上げる。後半に「ゼップに立ちたいという夢が叶った!」とTadaaki(B/Vo)が叫び、ラストは「ORANGE HEARTs」をプレイ。メンバー全員が歌/コーラスに参加できる強味を活かし、凄まじい熱量で場を沸騰させていた。 ■今にも壊れそうな脆さと揺るぎない芯の太さを持つ歌声に引き込まれる、友利あゆ 沖縄勢の2組目はシンガーソングライター、友利あゆ。アコギ弾き語りにより、「世界を救うヒーローになりたい」から繊細かつ力強い歌声で会場を自分色に染めていた。「自分はみんなより遅くファイナリストとして呼ばれて…選んでくれてありがとうございます!ゼップに立つ資格があるのかどうか…ずっと怖くて。でもみんなの心に残る表現者になりたい」と告白する彼女。「僕はまだ、青い」に入ると、その透き通る美声に多くの人が引き込まれていた。「今度は私が作る歌でみんなを支えたい。いままでの人生を賭けて歌います!」と言い放ち、「名も無き声」を披露。どこまでも伸びるハイトーン・ボイスで観客の魂を奪い去る。今にも壊れそうな脆さと揺るぎない芯の太さを持つ歌声は唯一無二のポテンシャルを秘めていた。 ■ライブで表現力を磨き上げてきた情感迸る歌声と演奏はただものではない、インタールード 長丁場に及ぶフェスも残り2組だ。大阪発の男女混合4人組、インタールードはサブスクなしMVなし、ライブで表現力を磨き上げてきた実力派である。それは1曲目「今更」を浴びただけでビシビシと伝わってきた。現場叩き上げの情感迸る歌声と演奏はただものではない。出音から迫力があり、バンドの屋台骨を支えるこうじ(Dr)のドラミング、まほ(Gu)はライトハンドを交えて流麗なギターを爪弾き、楽曲を勢い付けていく。間髪入れずに「あなたへ」、「忘れたくないもの」と畳み掛け、演奏のテンションは上がるばかり。特にたしろひな(Vo/Gu)のボーカルは圧巻。泣きながら坂道を全力で駆け上がるような、感情爆発のボーカルで聴く者を掴んで離さない。「心が震え上がる」とは、こういうパフォーマンスを体感したときに使う言葉だろう。しばし放心状態に陥るほどの感動を覚えた。 ■いい歌といいメロディ。正統派ギター・ロックと名付けたくなる安定感、admires 遂に残り1組となり、宮城発の3人組であるadmiresがステージに姿を見せた。「16歳」でショウの火蓋を切り、正統派ギター・ロックと名付けたくなる安定感を誇示。とりわけ、佐藤進乃助(Vo/Gu)は声量豊かにして、歌詞がはっきりと聞き取れる王道のロック・シンガー的な佇まい。歌が曲を引っ張り、そこにベースとドラムががっちりと絡み、無駄のないバンド・サウンドを鳴らす。「あなたの前でただいい音楽をやる」と佐藤は告げ、「ロックンロールだ」では拳を上げてノッている観客の姿が増えていく。最後は「人生で最初に書いた曲」と説明を挟み、「残響」を投下。まっすぐな歌詞と純朴なメロディを解き放ち、大勢の人たちが楽曲の世界に心酔。細工や装飾を取っ払い、剥き身のサウンドで直球勝負する潔さが最大の武器になっている。いい歌といいメロディをこれほど実直に聴かせるバンドも珍しいのではないだろうか。 ■ゲストライブに水曜日のカンパネラが登場 全10組による熱演が繰り広げられた後、ここでゲストアクトとして水曜日のカンパネラがライブを披露。客席後方から詩羽が現れると、「ティンカーベル」を経て、言葉のリズム感が気持ちいい「バッキンガム」と続け、フロアを沸かす。観客と密にコミュニケーションを図る「ディアプロ」、女性ダンサー2人を従えた「たまものまえ」と多彩な表現力を発揮。後半はダンサブルな「エジソン」、巨大な招き猫と共に「招き猫」をやり終え、エンタメ性に長けたプロフェッショナルなアプローチで会場を盛り上げてくれた。 さあ、後は審査の結果を待つのみ。マイナビYell Song賞はhalogen、審査員特別賞はYukkyがそれぞれ獲得。そして、グランプリを受賞したのはadmires。応募総数3078組の頂点に立った彼らはウイニングライブとして「16歳」を再び披露。メンバー3人は喜びを噛み締め、この場を心から楽しむように全力でプレイに励んでいた。その勇姿はとても眩しく、二度と戻らない歓喜の瞬間に会場も俄然ヒートアップしていた。ラストを締め括る“感情を燃やして叫んで鳴らして 言葉よ 光に変われ”の歌詞がここでまた新たな意味を加わった気がした。まさに希望の光を自身の手で掴み取ったadmires。その光をより一層磨き上げ、音楽シーンど真ん中で彼らが活躍する日を楽しみに待っている。 TEXT BY 荒金良介 『マイナビ 閃光ライオット2024 produced by SCHOOL OF LOCK!』 『マイナビ 閃光ライオット2024 produced by SCHOOL OF LOCK!』 2024年8月7日 Zepp DiverCity(YOKYO) セットリスト オープニングアクト でかくてまるい。 1.国道 2.36号線 プライドの高い深夜のコンビニアルバイト 1.死ぬまで 2.焦燥 3.青紫 LaDybug 1.KAWAII BABY☆ 2.ばくだんの詩 3.PUNK博士 皆川溺 1.遠泳 2.悪ふざけ 3.ベージュ Yukky 1.蜃気楼 2.1秒の今と青春 3.From Tokyo halogen 1.Masterpiece 2.透明な鎧 3.4 LOM 1.FLY 2.18AGE 3.WEEK Crazycastle 1.GIFT. 2.No.228 ~君色の夜空~ 3.ORANGE HEARTs 友利あゆ 1.世界を救うヒーローになりたい 2.僕はまだ、青い 3.名も無き声 インタールード 1.今更 2.あなたへ 3.忘れたくないもの admires 1.16歳 2.ロックンロールだ 3.残響 ゲストライブ 水曜日のカンパネラ M1.ティンカーベル M2.バッキンガム M3.ディアブロ M4.たまものまえ M5.マーメイド M6.エジソン M7.招き猫 グランプリバンド ウイニングライブ admires 1.16歳
THE FIRST TIMES編集部