老朽インフラ対策急務…大成建設、「コンクリひび割れ検出技術」外部提供
橋梁(きょうりょう)やトンネルなど国内インフラの老朽化対策が広がっている。大成建設はコンクリート構造物のひび割れ画像を解析する自社技術の外部提供を始めた。2040年には道路橋の約75%が建設後50年以上を経過するなど老朽化インフラが加速度的に増加する見通しで、国土交通省は管理者にインフラ点検の徹底を求めている。官民が一体となり、経年劣化に伴う事故や交通網の寸断などの対策を急ぐ。 【一覧表】ゼネコン4社の業績詳細 大成建設が提供を始めたのは、人工知能(AI)を使ってコンクリートのひび割れを解析する技術「t.WAVE」。デジタルカメラで撮影した画像をクラウド上にアップロードすると、ひび割れを自動的に高精度で検出。画像解析により幅や長さをミリ単位で定量的に算出する。建設コンサルタント会社の成和コンサルタント(東京都新宿区)が窓口となり、有料でサービスを提供する。 国内ではインフラ施設の経年劣化が懸念されている。国交省は老朽化した施設の定期点検を義務付けており、施設管理者はひび割れの状況確認を行う必要がある。ただ、作業員が近接目視で行うことが多いため、点検精度のバラつき発生や高所での作業時の身体的負担といった課題があった。大成建設は作業効率の向上やコスト低減を図れる利点を訴求し、施設管理者などに利用を促す。 近年はゼネコン以外でも対策に乗り出している。KDDIはAIを用いた自律制御型飛行ロボット(ドローン)を開発する米国企業に出資し、インフラ設備の点検などの用途で全国に提案する。一方、JR西日本とNTTコミュニケーションズ、みずほ銀行などは2月、道路や水道などの維持・管理を支援する事業で提携。効率的な工事・保守や資金調達などを一貫して行う。 経年劣化を放置すれば橋梁やトンネルの崩落など大きな事故が発生し、物流の停滞など経済的な損失が生じかねない。AIなど最新技術を利用しつつ、官民による一体的な対策が急務になっている。