東海大相模「野球できる喜び」胸に10年ぶり頂点 選抜高校野球
新型コロナウイルス感染の収束が見通せない厳しい状況下で、東海大相模(神奈川)が甲子園にさわやかな風を吹かせた。2011年、東日本大震災発生直後の第83回大会を制したタテジマのユニホームが、10年ぶりにセンバツ大会を制覇。コロナの逆境にもめげず、白球を追い続けた全国の球児たちの頂点に立った。 【今大会のホームラン】 新型コロナは名門にも暗い影を落とした。神奈川県にも緊急事態宣言が発令された1月以降、学校は原則リモート授業となり、全体練習すらままならない。グラウンドの改修工事も重なり、打撃練習などに大きな制約がかかった。練習時間は通常の約半分ほどに短縮され、石川永稀投手(3年)は「打撃練習の準備を少しでも早くして、一球でも多く打てるようにした」。選手たちは「練習時間が短くなったことがつらい」と声をそろえたが、決して言い訳にはしなかった。 1回戦から準決勝までの4試合を計1失点に抑え込む堅守でたどり着いた決勝だったが、常に先行を許す苦しい展開。そんな時でも、支えとなったのは「甲子園で野球ができる」喜びだ。昨年は感染拡大の影響を受けて、春夏とも甲子園大会が中止。夢舞台を奪われた1学年上の先輩たちの苦悩を目の当たりにした。だからこそ、大塚瑠晏(るあん)主将(3年)は「このコロナ下に大会を開催してくれた皆さんに感謝したい」と繰り返した。 大会中も宿舎での行動が厳しく制限されるなど苦しい状況が続いたが、選手たちは懸命にプレーした。東日本大震災の発生直後に開催された第83回大会を制した前回優勝時の主将で、現在は社会人野球・航空自衛隊千歳で野球を続ける佐藤大貢(ひろつぐ)さん(27)は当時、「開催を許してくれた被災地の方々に感謝したい」とあいさつし反響を呼んだ。甲子園で躍動する後輩たちの姿を「コロナ下の暗い雰囲気の中、彼らの元気あふれるプレーが勇気を与えてくれた」と喜ぶ。 開会式の選手宣誓で、仙台育英(宮城)の島貫丞主将(3年)は「2年分の甲子園」と表現した。門馬敬治監督も「全ての高校野球が、この甲子園に戻ってきた」と語った。2020年度、日本高校野球連盟に登録された球児は約14万人。彼らの2年分の思いも背負った対決を制し、東海大相模が紫紺の優勝旗にたどり着いた。【岸本悠】