バイデン対トランプ 討論会から見えてくる「“弱者男性” 対 “有害な男らしさ”」とは? ニューヨークZ世代が「男の強さと弱さ」を考察
ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみがパーソナリティを務めるinterfmのラジオ番組「NY Future Lab」(毎週水曜日18:40~18:55)。ジャーナリストでZ世代専門家のシェリーめぐみが、ニューヨークZ世代の若者たちと一緒に、日本も含め激動する世界をみんなで見つめ、話し合います。社会、文化、政治、トレンド、そしてダイバーシティからキャンセルカルチャーまで、気になるトピック満載でお届けします。 7月3日(水)のテーマは「“弱者男性”対“有害な男らしさ” バイデン対トランプの討論会から見えてくる、たった今の男性像とは?」。「NY Future Lab」に所属するアメリカZ世代が、男の強さと弱さ、弱者男性が生まれる背景について考えました。
◆アメリカの男性が“有害な男らしさ”を求めてしまう要因とは?
6月28日、アメリカ大統領選の初めてのテレビ討論会がおこなわれました。「トランプ氏の嘘連発のなか、バイデン氏のパフォーマンスはとても不安定だった」とロイター通信の見出しにあるように、バイデン氏はとても弱そうに見えたため、降板して別の誰かを立てるべき、という意見も出ています。 一方で、トランプ氏はすでに34の罪状で有罪になった犯罪者であり、残り3つの刑事事件の容疑者で、人種差別主義者。さらには女性蔑視もあります。ところが、そんなトランプ氏を降板させようとは誰も言いません。その背景には、「男は強くなければいけない」というアメリカの価値観が深く関係している可能性があります。 今回は、「弱者男性」をテーマにニューヨークの若者たちと男の強さと弱さについて考えます。日本では「弱者男性」という言葉がよく聞かれるようになりましたが、英語でこれを説明している記事は多くありません。 「Medium」という社会評論ジャーナリズムのウェブマガジンには、「現代の日本では“弱者男性”というレッテルが登場している。経済的、教育的、社会的な基準を満たさない、あるいは主流の男性像に当てはまらない男性を指す」と書かれています。実は、アメリカでもこうした男性は増えています。しかしながら、弱者ではなく、むしろ逆の形となって世に出ています。ラボメンバーの話を聞いてみましょう。 ノエ:今の男は男らしくないとか、LGBTQの子どもたちを批判したりするのも含めて、そういうのはすべて“古い男らしさ”に基づいていると思うよ。今や女性やLGBTQ、人種的マイノリティがそれぞれ連帯して、いろいろなグループを作っているでしょう? だけど、男性はそういうコミュニティやパートナーを見つけるのが難しいから、仲間はずれにされたような孤独感を抱えているんじゃないかな。これは、とても伝統的な白人のストレートの男性のことを言っているんだけどね。 メアリー:たしかに、そういう男性は気持ちを分かち合える相手を見つけるのは難しいでしょうね。でも、彼らはそんなに深く考えるよりも、PodcastとかInstagram上の身近なクレイジーな人物に群がっているんだよ。 そういうPodcastはたいてい、「自分たちが大変なのは誰か他の人たちのせいだ」と主張して、ほとんどの場合は女性のせいにしている。そして「弱い男になるな! 強い男になれ!」「ワークアウトして筋肉をつけろ」「女を手に入れろ」「ブガッティのような高級車をゲットしろ」って言っている。クレイジーだよね。 アメリカでは弱者とはまったく逆の、強い、または強そうに見える男になろうとする人たちがいます。そうした有害な男らしさに憧れを抱くことと、弱者男性が生まれる経緯は同じではないかとZ世代専門家のシェリーは推測。「女性やマイノリティのエンパワーメント、LGBTQの権利など、彼らが連帯して社会での地位を高めるなかで、“とり残された”と感じる男性が増えているようです」と話します。 そうした弱い気持ちを隠すために、アメリカでは過剰にも見えるような男らしさの追求となって、ミソジニー(女性蔑視)やホモフォビア(同性愛者嫌悪)といった攻撃的な形で表れます。「(そうした傾向は)特に白人男性に多いです。彼らに所属意識が薄いのは、もともと既得権益を持っているからです。戦う必要も連帯する必要もなかったからだと思うのですが、それにも気付いていないです」とシェリーは説明しました。