【木村和久連載】セルフプレーが主流になったゴルフラウンドの今 ナビボードの性能も格段にアップ
どういうことかと言うと、昔のキャディさんであれば、林にボールを打ち込んだら「はい、7番アイアンを持って」と、かなりプレーヤーに関与してきました。20年ほど前の話ですけど、ショートホールではキャディさんが初心者にクラブを勝手に配っていましたからね。「あんたは、7番で」「あんたは、力まず8番で軽く」といった案配で。 今は、そういうのはないですね。できるキャディさんは、「林に入ったときは何を使います?」「アプローチはSWでいいですか?」って、あらかじめ聞いてきます。 キャディさんの一番の腕の見せどころだったグリーン上のライン読みに関しても、今では皆がセルフプレーに慣れているので、プレーヤーに好きに打たせています。プレーヤーも悩んで困ったときだけ、キャディさんにアドバイスをもらっている。そういうパターンが多いです。 そもそも今のプレーヤーの多くは、キャディさん慣れしていません。セルフプレーばかりしているので、どう接していいかわからない、というところがあるようです。 昔はパットが入らないと、キャディさんに食ってかかる人がいました。「ウソばっかり教えるね」とか、嫌みを連発したりして......。 キャディさんというのは、やはり古き良きメンバーコースでこそ、存在価値が高まるものなのでしょう。 20~30年前に、南総カントリークラブ、鶴舞カントリー倶楽部のメンバーだった頃、キャディ付きが基本でした。そうなると、キャディとの相性などが生まれたりして。あるいは、互いのクセがわかったりとか。 もちろん各コースにはエースキャディがいて、大きな試合の大事な場面には、そのエースキャディが登場するんですよね。自分も何回か付いてもらいましたが、ほんとグリーンのことはよくわかっているんですわ。 キャディ付きラウンドは、ひとつの文化だったのかもしれません。
そうした状況にあって、歩きのキャディ付きラウンドを頑なに守ってきた名門コースで異変が起きています。足腰が弱ったメンバーに、軽量な2人乗りの乗用カート利用を許可する動きがあるのです。 名門コースは、英国紳士のスピリットを受け継ぎ、質実剛健。歩きラウンドが基本です。とはいえ、もはやメンバーの高齢化には勝てなくなってきたんですね。 日本人男性の平均寿命は81歳ぐらい。健康寿命は73歳ぐらいと言われています。ということは、70歳を越えると、歩行ラウンドしづらい人が増えます。今後は、そういう方々がどんどん増えていくわけですしね。 個人的には乗用カート利用、大賛成です。生涯スポーツと謳うゴルフなのだから、体が不自由になっても、生涯ラウンドできる環境を作っていただかないと。 乗用カート導入に反対していたメンバーが、晩年には乗用カートの世話になるとは......なんとも皮肉な結果ですよね。
木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa