歓送迎会、卒業式「稼ぎ時なのに…」 新型コロナで自粛、業界が悲鳴
新型コロナウイルスの感染拡大にともない、イベント開催を自粛する動きが拡大しています。歓送迎会の会場となる飲食店や、卒業式などの式典に使われる切り花の販売店では、稼ぎ時の3月にも関わらず、売り上げが低迷するところも。シンクタンクの大和総研は、2月28日に発表した個人消費の下落予想が、1か月を経たずしてさらに落ち込む可能性があるとしています。
入社式、いつもと違う
国内大手企業では、多くの人が集うイベントや会食への参加自粛を社内に呼び掛けるほか、大勢の新入社員を会場に集める従来型の入社式のやり方を変更するところが相次いでいます。 NTT東日本は入社式を事業部や支店ごとで行うほか、新入社員を含む参加者が30人以上の場合は、それ以下の人数で複数回に分けて行う方針です。三菱UFJ銀行は新入社員を自宅に待機させ、会社側が貸与したタブレット端末を使ってオンラインで入社式を行う予定。東芝は新入社員を出社させるものの、社長あいさつなどの式典は映像で各職場に配信する形にするそうです。 また、大学でも、早稲田大学、慶應義塾大学、北海道大学などで卒業式が中止に。入学式も、東京大学などがすでに中止を発表しています。
しゃぶしゃぶチェーン「予約が入らない」
「3月といえば歓送迎会が多く、年間でも売り上げが比較的多い月なのに、今年は予約自体が入らない状況です」 こう嘆くのは、しゃぶしゃぶ・日本料理店「木曽路」などの飲食店を運営する木曽路の広報担当者。営業面では、細かい数字は明かせないとしたものの「厳しい状態にある」と言います。「外食産業は人を店に集める商売ですが、今は人を集める行為が社会的に良いのかどうかが問われがちな状況。ある意味、我慢する時期でしょう。他の産業も同じでしょうが、今後の不透明感が薄れてくれないと、なかなか消費が回復しないのでは」と、感染の収束、ひいては需要の回復が見通せない現状を憂いています。
会場彩る花も注文減
東京を中心に花の販売店を展開する第一園芸の広報担当者は「3月は卒業式や送別会などがあるため、年間を通しても12月に次いで需要が多い月ですが、今のところ例年より20%ほど売り上げが下がっています」と話します。恒例行事の中止に加え、同社の店舗の多くが都内のオフィスビルや大手百貨店内にあるため、テレワークによる出勤者の減少や、百貨店の営業時間の短縮も影響したと言います。 売り上げの減少を挽回するため、同社では自宅に切り花を飾って花見を開く、という楽しみ方を提案するほか、花き農家を応援するための販売促進キャンペーンにも注力する考えです。広報担当者は「いま、一番困っているのは花の生産者です。彼らを支援していかねばならないという思いは、業界全体にあります」と力を込めます。 東京都中央卸売市場の担当者は、「3月はイベントや式典向けに需要があったウニなどの高級水産物や切り花の売り上げが落ち込み、水産物や花きの仲卸事業者の経営に影響が出ていると聞いています」と話します。ただ、全ての業者が厳しい状況にある訳ではなく、「例えば、水産仲卸事業者の中でも、主な顧客が飲食店だと売り上げが芳しくありませんが、スーパーなどの小売店との取引が多い業者は、家で食事するニーズが高まっているため、業績が好調なケースもあります」とのことです。