人件費削減、若手離れ…緊急的に声明を出した国立大の真意は?
──大学ランキングも下がりつつある 大学ランキングは100%客観的な基準だとは誰も思っていない。ただ相対的に比較するのに使えないことはない。ランキングを上げるために何かするのはナンセンスだが、現れた弱点について考えることは悪いことではない。 今の大学の状況とランキングの低下は連動している部分がある。世界の主要な国で論文数が上昇しているのに、日本だけ論文数が増えていないのは明らかだ。論文数は大体お金に連動している。 ──国の財政も厳しい中、これから何が求められるか 運営費交付金が毎年100億円ずつ減らされてきた。1年間だけならそんなに影響がなかったと思うが12年間積み重なってきた。 国全体のお金で見たとき年間100億円という投資額は決して大きくはない。福祉予算は年間40兆円というレベルで、毎年何兆と増えていく。僕も後期高齢者になるから色んなサポートがあったらうれしい、だけどそこにばかりお金を出して、若い人や将来の国に投資しないで本当に日本っていう国は大丈夫なのかと言いたい。 まさにここに投資して、10年、20年後に日本が実を刈り取るようなことが必要だ。もちろんこんなにシンプルにはいかないと思うが、100億円はほんのちょっとの付替えでいかようにもなると思っている。政治家がやろうと思ったらいくらでもやれるはずだ。学術に理解のある政治家が減っていることが背景にあるかもしれない。 こういったことに対して、社会で共感が得られるように、基礎科学が傷んでいるねというメッセージを世の中に伝えることが大事だと思っている。大隅さんが今回「『役に立つ』という言葉が社会を駄目にしている」と話されたのはとてもわかりやすかった。国民目線になったときに、基礎科学って、やっぱり細々と維持するための最低限のお金が必要なんだよねってことが伝わったのではないか。大隅さんはがんこだから、これからも言い続けてくれると思うし、私達も訴えていきたい。 (取材・文/高山千香)