持続可能性を追求する新鋭マイクロ“ブルスティルリー(醸造所兼蒸溜所)”(インヴァネス)【公共交通機関で簡単に行けるスコッチウイスキー蒸溜所探訪記】
情熱あふれる若手チーム
これら最新鋭の酒造設備を駆使して素晴らしいクラフトビールとウイスキーを造り出しているのは、醸造主任のルーカス・プレッツァー氏(27)と蒸溜主任のアンドリュー・シーラー氏(29)。どちらも30手前の若い造り手だ。 ドイツ屈指の古都バンベルク出身のプレッツァー氏は、ビールの本場で培ったノウハウを活用し、複雑で繊細な味わいと飲みやすさの絶妙なバランスを追求したクラフトビール造りを展開している。 一方、醸造・蒸溜学で名高いエディンバラのヘリオット・ワット大学で修士号を取得したスコットランド人のシーラー氏は、伝統的なスコッチウイスキーの製造法にちょっとしたモダンなひねりを加えたシングルモルトウイスキーを造り出している。彼のウイスキーはまだ最低3年の法定熟成期間を満たしていないため味わうことはできないが、ニューメイク(熟成前の原液)の質からして、素晴らしいものとなることが期待される。
他の蒸溜所の試飲会も開催
所要時間1時間15分の見学ツアーでは、ウーラヴェイシュトの持続可能性を追求したビールとウイスキー造りの現場を見学したあと、クラフトラガービール、彼ら独自のブレンデッドウイスキー、そしてニューメイクを試飲できる。料金は1人(12歳以上)33英ポンド(約6600円)。 製造現場直結のバーは、見学ツアーに参加しなくても気軽に利用できるので、現在5種類あるクラフトビールを飲み比べてみたり(飲み比べセットあり)、スコッチウイスキーの印象的な品揃えの中から新しいお気に入りを見つけるのもいいだろう。 週末には、多彩なジャンルの音楽の生演奏やDJがムードを盛り上げてくれる。ブルスティルリー内に厨房はないが、隣接ホテルのレストランからの軽食をバーで注文して食べることもできる。 さらにウーラヴェイシュトでは、他の蒸溜所のウイスキーやジンの試飲会などのイベントも定期的に開催している。遠隔地にある蒸溜所にとって、ハイランド地方の主要都市インヴァネスの中心部にあってアクセス良好なウーラヴェイシュトは、理想的なプロモーションの場だ。競合の枠を超えた、この助け合いの精神がなんとも素晴らしい。 百聞は一見に如かず。スコットランド旅行をお考えの方に、ぜひともお勧めしたい。 文/ケリー狩野智映(スコットランド在住ライター)海外在住通算30年。2020年よりスコットランド・ハイランド地方在住。翻訳者、コピーライター、ライター、メディアコーディネーターとして活動中。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織海外書き人クラブ会員。
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