【無罪判決が出た理由は?】ドン・ファン元妻への判決を読みとく「完全に否定できない」「言い切れない」和歌山地裁は検察側の立証不十分と判断
『紀州のドン・ファン』事件。無罪判決となったポイントは「疑わしきは被告人の利益に」を貫いたという点に尽きる判決となりました。 裁判員を務めた20代男性会社員は会見で、「今回、直接的な証拠がないということもあり、有罪の目で証拠を見てしまうと有罪に見える。無罪の目で見ると無罪に見えてしまう。中立の立場で証拠だけをみて、感情を切り離して考えるようにしました」と話しました。
◆判決の総合評価は
和歌山地裁(福島恵子裁判長)の判決は、総合評価として、「被告が野崎さんに致死量を超える覚醒剤を摂取させることは一応可能で、インターネットで覚醒剤を注文し、密売人から品物を受け取ったことや、死亡当日に、繰り返し2階と1階を行き来する普段と異なる行動を取っていることなどは、被告が殺害したのではないかと疑わせる事情ではあるが、被告が殺害したと推認するに足りない」としました。 具体的な項目については、以下のように判断しています。 【2階との行き来について】 判決では「死亡当日は、ヘルスケアアプリの記録から1時間に7回行き来した記録があり、ほかの日には見られない行動だが、野崎さんと無関係な理由で1階と2階を行き来していた可能性も否定はできない。」と判断しています。 【検索履歴について】 判決では、「被告は、『殺人罪 時効』『殺人 自白なし』などを検索しているが、単なる関心から検索することもあり得、殺害していなければあり得ない行動とは言えない。」と判断しました。 【品物は覚醒剤だったのか】 被告が対面で受け取った品物が覚醒剤かどうかについては、2人の証人が違うことを言っていて、一人は「売っていたのは氷砂糖だ」と述べ、もう一人は「覚醒剤だったと思う」と話しています。 これについて判決は、「氷砂糖と言った証人は、覚醒剤と言うと処罰される可能性があり、虚偽供述する理由がある」とわざわざ述べつつも、結論としては「覚醒剤だった可能性はあるものの、氷砂糖であった可能性も否定できない」とし、じゅうぶんな立証とは認めませんでした。