「鼻綿棒」でPCR検査17回――カメラマンが体験した国際大会の感染対策とは
今年1月、エジプトで開催されたハンドボールの世界大会を取材したフリーカメラマンの田口有史さん。厳重な感染症対策に戸惑うこともあれば、ほころびも感じたという。エジプト滞在約23日間で17回ものPCR検査を受けた田口さんに、その体験を聞いた。(ライター:菊地高弘/撮影:田口有史/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
日常と化したPCR検査
綿棒を鼻に突っ込まれ、粘膜から検体をこそげ取られる。今回はどれくらい奥まで突っ込まれるだろうか、何回ねじられるだろうか。そんなことを考える余裕があった。エジプト滞在約23日で17回目のPCR検査ともなれば、もはや綿棒で鼻やのどを突かれるのも日常と化していた。 「最初のころは『今日のやつは痛かったな』なんて周りと話していたんですけど、さすがに毎日やっていると、淡々と『突っ込んで、ハイ、終わり』という感じになっていきましたね」 フリーカメラマンの田口有史さん(47)は、異国でのPCR検査の日々をそう振り返る。田口さんは、エジプトで開催されたハンドボールの男子世界選手権で全日本チームを撮影するため、今年1月3日から25日まで同行していた。国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が、閉幕した際に「大いに励みになる。この経験が東京五輪にも生きる」と評価した大会だった。新型コロナの世界的な蔓延後、初めて開かれた団体競技の国際大会で、東京五輪開催を占う意味でも注目されていた。
大会は「バブル」と呼ばれる感染対策を敷いていた。アメリカでの取材経験の豊富な田口さんが解説する。 「これは米NBA(ナショナル・バスケットボール・アソシエーション)が最初に取り入れたシステムです。選手・関係者をホテルや体育館の同じ空間に隔離することで外部からウイルスを持ち込ませないようにするんです」
感染対策は日本国内にいるときから始まった。田口さんは昨年12月31日に日本代表チームに合流すると、外部との接触を極力減らすため一緒に合宿生活に入る。選手と一緒に競技場に入る必要があるため、日本の選手団と同じレベルの感染対策が求められた。 出国時にはPCR検査による陰性証明書が必要だ。エジプトに入国すると、即座にチーム用のバスに乗せられて、そのまま出場チームのために用意されたホテルに向かう。