全国各地で改廃が進む「ツーブロック禁止」の校則 なぜ教育現場で「目の敵」にされてきたのか?
■学校が荒れすぎて… 話は少し脱線するが、全国各地では80~90年代前半ごろまで、「徹底した管理教育」と映るような指導もあった。 担当者は40代で別の自治体出身だが、通った公立中学の男子生徒は全員丸刈りがルールだった。 「当時は疑問に感じたことすらなく、中学生ってそいういうものでしょ?くらいにしか思っていませんでした。県外から転校してきた2学年下の男子生徒だけが、おかしい!と声をあげていたことを覚えています」(担当者) 同じく40代の筆者が通った千葉県北西部の市立中学も、男子生徒は前髪が眉毛、サイドが耳にかからない短髪のみ。女子は刈り上げのショートカットかおさげ、三つ編みのみが許されていた。毎朝、正門にはチェック担当の教師と生徒が待ち構えていた他、定期的に身だしなみ検査があり、微々たる「違反」で教師に無理やり髪を切られた女子生徒もいた。 「過去に学校が荒れすぎて、校則が厳しくなった」というのが生徒たちの定説だった。 ■再規制も起こりうる? 90年代の新聞記事をさかのぼると、制服をせっかく自由化したのに、その後「乱れ」が目立つようになり、もとに戻った学校が全国で複数あった。 自由化→自由のはき違え→再規制の可能性は否定できない。 担当者もそうした経緯は認識しており、「自由という言葉について、子供が感じるものと社会が認識するものは、必ずしもイコールではない。自由を大切にするためには『責任』と『自律心』が必要で、そうでなければ好き勝手が横行してしまいます」と指摘する。 ■自由を守る力を身に着けて ただ、担当者は時代の変化を前向きにとらえており、再規制の可能性には否定的だ。 「昔と違い、今は多様性や国際性を踏まえた人権意識の高まりがあります。昔は当たり前だったルールや習慣でも、今の時代には合わないのではないか。そんな問いかけをする姿勢が、生徒にも教職員にもあります。今の生徒たちは校則に抑圧されたり、反抗したりするのではなく、主体者として意見を表明して、校則の見直しに参画しています。成長過程にある生徒たちが、校則を考える主体者になることで自律心を養い、責任ある行動をとる力、自由を守る力を身に付けていってほしいと考えています」 大人たちには想像がつかないような、奇抜な髪型の人気アーティストが現れ、子どもたちが憧れる。そんな時代がまたやってくるかもしれない。 ツーブロック禁止がなぜ校則に盛り込まれたのか、そしてなぜ廃止される流れになったのか。その背景を知り、考えることが重要なのだろう。 (ライター 國府田英之)
國府田英之