「火星に液体の水」NASA発表の根拠は“塩”?
NASA(米航空宇宙局)が先月、「火星に液体の水がある(ということを示す水和した塩がある)強い証拠が見つかった」と発表したことが、宇宙研究者の間で注目されました。その発見のもとになったのは、火星の表面にある筋状の模様です。こうした研究は今に始まったことではなく、火星研究者の間ではこの数年間ずっと注目されてきました。火星には本当に「液体の水」があるのでしょうか? 【後編】「火星に水」があるならどんな生物が生存できる?
「拍子抜け」だった? 発表の内容
NASAは先月27日、「重大発表をします!乞うご期待!」とアナウンスしました。そして、その翌日の28日に、「火星に液体の水がある(ということを示す水和した塩がある)強い証拠が見つかった」と発表しました。ここでいう「塩(えん)」とは、酸とアルカリの中和反応などでできるイオン化合物のこと。そして、「水和」とは塩などに水が付加していることをいいます。 NASAの発表を「大ニュース」と受け止めた方が多かったようですが、「どんなすごい発表があるのだろう」と楽しみにしていた私にとっては拍子抜けのニュースでした。 というのも、今回の発表の中でたびたび出てくる「繰り返し現れる筋状の模様(RSL)」は、2011年にすでに発見されていたものであり、惑星科学の専攻だった私は 大学院でこれについての研究を少ししていたからです。「何を今さら」とは思いつつ、久しぶりにこの言葉を聞いて心が躍ったので、今回の発表のポイントについて解説します。
「繰り返し現れる筋状の模様」(RSL)とは?
まず「繰り返し現れる筋状の模様(RSL)」とは何か、についてです。 上の写真は火星のクレーターの縁の斜面を写したものですが、黒い線のようなもの(RSL)がたくさん見られます。RSLとは Recurring(季節ごとに繰り返す) Slope(斜面の) Lineae(線)
つまり「春から秋の暖かい季節に現れ、冬になると消えるのを繰り返す、クレーターの縁などの斜面に現れる黒い線のようなもの」のことです。幅は5メートルより短く、長さは長いもので100 ~ 200メートルほどもあります。