曲がる太陽電池「ペロブスカイト」…開発で先行する積水化学工業社長「25年の事業化を進める」
薄くて軽く、折り曲げられる次世代の太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」への注目が高まっている。政府は2040年に発電能力で原発20基分にあたる約20ギガ・ワット、約600万世帯の使用電力を賄う目標を策定する方針だ。開発で先行する積水化学工業の加藤敬太社長に聞いた。(聞き手 松本裕平、写真も)
普及に10年
ペロブスカイト太陽電池は、半導体や液晶向けに培ってきた「封止」という部材を守る技術を生かした。電池で問われる耐久性を高め、エネルギーの変換効率も上がってきた。ロールから巻きだしたフィルムを加工し、再び、ロール状に巻き取る得意の生産技術も使える。少量なら商用化できるレベルにあり、2025年の事業化を間違いなく進める。
ただ、ペロブスカイトが街中に普及している世界の実現には10年はかかるだろう。 自然災害にどう対応するか、様々な気象条件のもとでの動作に問題はないか。これまでに設置していなかった場所がターゲットになるだけに、施工技術は十分なのか。我々の製品が世界市場で良いポジションを得て、デファクトスタンダード(事実上の基準)として確立できるよう、信頼できるパートナーを探しつつ、ビジネスモデルの構築に注力している段階だ。
事業化に際しては量産に向けた投資も必要で、自社だけでなく、他社の拠点活用なども検討している。 世界で開発競争が激しくなっており、関連ビジネスを含め、官民一体のオールジャパンで取り組んでいければ、未来社会に貢献できる大きな事業に成長していける。
意識変える
来春開幕する2025年大阪・関西万博では、脱炭素を達成する先進技術を体験できる「グリーン万博」が一つの魅力になっている。我々も、会場近くのバス停屋根にペロブスカイトを設置する。 先端技術や製品を世界中の人に知ってもらうことはもちろん大事だが、展示を見て体験することで、「なんでこんなにガソリンが高いんや」と不満をこぼす人が「石油化学燃料に頼らない暮らしがあるんだ」と感じ、意識が変わっていくような機会にしていくことも重要だ。すでに消費者は「石油をばんばん使ったプラスチックの方が安くて良い」というのではなく、環境や脱炭素に配慮し、サステナブルな製品であることを評価するように変化しつつある。