就活生の78%が「パーパス重視」、給与重視はわずか パーパスのない企業は、Z世代を採用できない時代に
◆人材不足の時代、パーパスでミスマッチを防ぐ
――パーパスが影響を与えるのは新採だけでしょうか? もうひとつ、最近、顕著なのが「アルムナイ採用」の広がりです。 アルムナイ採用とは、一度会社を辞めた人の採用で、大手企業を中心に当たり前になってきました。 たとえば、パナソニックグループは2024年4月から退職者をつなぐ「パナソニックグループ・アルムナイコミュニティ」の本格運用を始めました。 何らかの理由で辞めて、転職したり、起業したりしても、自分のパーパスに照らして元の会社に戻ることができます。 人手不足が深刻化する中で、今後は中小企業も含めてアルムナイ採用が活発になるのではないでしょうか。 そうすると、企業も個人もパーパスを持ち、ミスマッチを防ぐことが重要になっていきます。
◆パーパスが、異業種コラボをつなぐ
――パーパスには、人材確保のほかにどのようなメリットがありますか。 2021年に九州経済産業局主催の「九州アトツギMeetup -ツギの事業創造3Days-」というイベントがあり、私はワークショップのファシリテーターを務めました。 参加した十数人の跡継ぎの方々が未来を描く発表をしたのですが、その内容がパーパスの表明に限りなく近いものでした。 結果、跡継ぎの方々による共創パートナーが生まれたのです。 思いが共感すればともに行動しやすく、共創プロジェクトを起こしやすいことの表れではないでしょうか。 たとえば、コロナ禍でキャンプがブームになっていたこともあり、技術を生かしてアウトドア機器を作っている鉄板加工屋さんと、元々アウトドア市場とつながりがある釣具屋さんが意気投合して「一緒に何か市場をつくりましょう」というコラボレーションが生まれたのです。 ――普段関わらないような経営者同士でも、思いが伝われば化学反応が生まれるということですね。 私は「コラボレーションの創発」という取り組みを九州・中国地区で10年くらい続けていました。 さまざまな事業者40人くらいに集まってもらい、それぞれの経営資源を掛け合わせて何かを生み出そうというワークショップです。 10年間を振り返ってみると、コラボレーションが長く続いているのは、結局、理念で結びついた人たちです。 思いや理念が組み合わさってコラボレーションを始めた人たちは、いまだに活動を続けています。 中には一緒に会社を立ち上げた例もあるくらいです。 一方で、お互いに「営業力の弱い部分を補い合おう」という試みは、3カ月もしないうちに自然とコラボレーションが解消されて、カタチにならないことが多かったですね。 企業同士が連携するためにも、理念や思いは非常に重要だと思います。