iPhoneでマイナンバーカード、対応モデルは?何ができる?取材でわかった現状と今後
日本のICカード身分証であるマイナンバーカードが、来春後半からiPhone(iOS)のAppleウォレットアプリに登録して電子証明書として使えるようになる。アップルが5月30日に行った発表の内容について、取材でわかった情報を伝えよう。 Appleウォレットの身分証明書機能が米国外で使えるようになるのはこれが初めてだ スマホで利用できるマイナンバーカードは、2023年にグーグルのAndroid端末が「スマホ用電子証明書」サービスとしてアップルに先駆けてこれを実現した。Androidのサービスはマイナンバーカードに内蔵するICチップの利用に対応している。 アップルはデジタル庁と連携しながら、iPhoneのAppleウォレットにマイナンバーカードの「券面」と「ICチップの機能」の両方を登録し、ユーザーがセキュアに利用できるサービスの実現を目指す。暗号化されたユーザーの個人情報はAppleウォレットのセキュアエレメントに格納される。個人情報の本人確認には、物理的なマイナンバーカードのICチップも採用するJPKI(Japanese Public Key Infrastructure)が対応する。 マイナンバーカードを利用する際、ユーザーは都度ウォレットアプリを立ち上げて、自身のマイナンバーカードを選び、iPhoneの画面に表示する。毎回Face IDまたはTouch IDによるユーザー認証の手順を介するため、ユーザーが自身のマイナンバーカードを安全に使える環境が確保される。 非接触IDカードリーダーについては、現在発行されている物理的なマイナンバーカードの場合と同様に「iPhoneをかざす」ことで同じように読み込めるようになるという。 Appleウォレットには、マイナンバーカードの券面も取り込まれる。先述の手順によりiPhoneのロックを解除後、マイナンバーカードを立ち上げて「券面事項を読み取る」ことで利用できるサービスや、対面による身分証明書としての利用にも役立てられる。 ユーザーがiPhoneのマイナンバーカードを利用した履歴情報は暗号化されるので、アップルやその他の第三者が情報をのぞき見ることはできない。万一、iPhoneを紛失した場合もデバイスにロックをかけていれば、第三者がロックを解除することは困難を極めるため、物理的なマイナンバーカードよりも安全に利用できるサービスになるとも考えられる。iPhoneを紛失した場合は「探す」アプリからの遠隔探索が可能だが、もし端末が見つからない場合は、端末のリモート消去機能によってマイナンバーカードの情報ごと個人情報を消せば、流出を防げる。 iPhoneのマイナンバーカードが利用できる機能の詳細は、来春後半までに内容が固まり次第明らかにされるだろう。現時点でわかっている残りの情報についても補足する。 対応するiPhoneの機種については、来春後半のサービス導入時期に公開される予定の、「最新のiOSを導入できるすべてのiPhone」となる。 なおApple WatchのAppleウォレットアプリへの対応については、現時点で明らかにされていない。 マイナンバーカードで利用できるサービスや機能は今後も拡大する見込みだ。iPhoneのマイナンバーカードがそのすべての内容をフォローアップすることになるかは、アップルとデジタル庁が技術や手順の整合性を図りながら決めていく。 iPhoneにマイナンバーカードのデータを取り込んだ後も、物理的なマイナンバーカードが引き続き利用できるようになるのか、あるいは複数台のiPhoneを利用するユーザーが何台のiPhoneにマイナンバーカードを登録できるのかなど、気になる疑問もわいてくる。「ICカード身分証のコピー」の運用についてはカードを発行する行政の側、つまり日本のデジタル庁の裁量に委ねられる。今後発表される仕様の詳細に引き続き注目したい。
山本 敦