60代から一人暮らし。築50年のマンションを「終の棲家」へリノベした建築家のアイデア
建築家の山村健さんとパートナーのナタリア サンツ・ラヴィーニャさんが、お母さまが暮らすマンションの一室を「終の棲家」へと改修。これまでのライフスタイルを大切にしつつ、現在とこれからの暮らしを見据えて、細部まで思いやりにあふれた軽快な空間へと生まれ変わりました。 【写真集】60代のマンションリノベの極意とは?建築家・山村健が手掛けた母の家
暮らしをリスタート。築50年の住み慣れた空間を改修
リノベーションは、ライフステージによって大きく変わります。近年、セカンドライフを生き生きと暮らすために60代以上で「終の住処」へとリノベーションする事例が増えていますが、建築家・山村健さんのお母さまもその好例。「以前から60代になったらリノベーションしようと決めていたんです」とお母さまは言います。 40年前から郊外の築50年のマンションに家族3人で暮らし、20年前にご主人が他界。息子の健さんが独立してからは、一人暮らしでした。
公私をうまく切り替えながら職住一体の住まいを実現
改修前は、3LDKの間取り。「母は介護のアドバイスをする仕事をしており、同じマンションの住人の相談を受けることも。家で仕事をすることもあり、日常生活を送るプライベートと仕事のスペースは分けようと考えました」と健さんとパートナーのナタリア サンツ・ラヴィーニャさん。北側にある一室は仕事部屋を兼ねた書斎に充て、普段は戸を開けたまま暮らす生活を考慮して、基本は引き戸を採用しました。書斎も引き戸を開ければ、玄関や廊下と一続きになります。「かつては僕の部屋でしたが、本当に寒くて」と健さん。その実体験から壁には断熱材を入れ、床暖房で快適に過ごせるようにしました。
慣れ親しんだものは踏襲し楽しむための創意を加える
日当たりのよい南側はLDKと和室の間仕切り壁をなくし、以前からのカーペット敷きのスタイルは継続。和室だった部分まで新たにカーペット敷き込んで連続させ、健さん家族が泊まりに来てもフレキシブルに活用できるようにしました。壁向きだったキッチンは対面式に変更。料理をしながら窓の外の景色も眺められます。また、全部の食材をカウンター上に並べて調理するお母さまのために、キッチンカウンターの奥行きは広く設定。カウンターにはハイスツールを置き、朝食や仕事の合間のお茶など手早く済ませたいときに活躍しているそう。