物価上振れリスク減少、政策判断に時間的な余裕ある-植田日銀総裁
(ブルームバーグ): 日本銀行の植田和男総裁は24日、米国経済動向などの先行き不透明感が強まる中、足元の物価上振れリスクの減少に伴い、政策判断に「時間的な余裕はある」との見解を改めて示した。大阪経済4団体共催の懇談会で講演し、その後に記者会見を行った。
植田総裁は、8月の市場変動を受けてそれまでの大幅な円安が修正されており、「輸入物価上昇を受けた物価上振れリスクは相応に減少している」と指摘。その上で、政策判断に際して「内外の金融資本市場の動向やその背後にある海外経済の状況などについて、丁寧に確認していく必要があるし、そうした時間的な余裕はある」と述べた。
米国経済の展開は「依然不確実だ」とし、これまでの利上げの労働市場への影響や労働需給の緩和による個人消費の先行きもみていく必要があるとした。その上で、米国経済や内外の金融資本市場の動向が経済・物価に及ぼす影響についても注視する考えを示した。
一方で、先行き、基調的な物価上昇率が見通しに沿って高まっていくならば、「政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことが適当」との考えを重ねて強調した。
20日の金融政策決定会合では政策金利を0.25%程度に維持。植田総裁は会見で、日銀の経済・物価見通しが実現していけば利上げを継続する方針を表明した一方で、金融市場や米経済の不透明感の強まりに警戒感を示した。「時間的な余裕はある」とも発言し、市場では早期の追加利上げ観測が後退している。この日も同様の見解を繰り返した形だ。
植田総裁の発言を受け、円相場は対ドルで一時144円台後半まで下落した。
植田総裁はまた、「将来、基調的な物価上昇率が2%前後となる局面では、政策金利を経済・物価に対して中立的な水準に近づけることが望ましい」と発言。実際の政策運営に当たっては、あらかじめスケジュールは定めずに「さまざまな不確実性を踏まえた上で、適時・適切に行う必要がある」との見解を示した。