石破政権〝無策〟露呈 USスチール買収禁止命令、平井宏治氏「中国寄りの姿勢も影響か」 日鉄は米政府を提訴へ
「政争の具」に利用? 米国のジョー・バイデン大統領は3日、日本製鉄による米鉄鋼大手USスチールの買収計画について、「安全保障と重要な供給網へのリスク」を理由に禁止する命令を出した。これに対し、日鉄は米政府を提訴する方針を固めた。買収計画をめぐってはドナルド・トランプ次期米大統領も反対しており、米国内の「政争の具」に利用されている面もある。それだけに石破茂政権の〝無策〟ぶりも目立つ。 バイデン大統領が命令 日鉄は提訴へ バイデン大統領は日鉄とUSスチールに、原則30日以内に「買収計画を完全かつ永久に放棄するため必要な全ての措置」を講じるよう命じた。 日鉄は3日、USスチールと共同声明を発表し、禁止命令は「明らかに政治的な判断だ」と主張した。安全保障問題に関する確かな証拠を提示しておらず、適正手続きや法令に違反していると指摘した。対米外国投資委員会(CFIUS)の懸念を解消するため、米国側がUSスチールの生産能力の削減に拒否権を持てる措置を自主的に提示してきたことも強調した。 日鉄はこれまで当局の懸念を解消するため、USスチールの取締役の過半数を米国人とする案も示してきた。 だが、米国内では「政治的」な理由が先行している。USスチールは大統領選で激戦州とされる東部ペンシルベニア州に本社を置く。このため買収計画は昨年の大統領選でも争点になった。バイデン大統領は任期終了間際だが、次の4年をにらんで買収禁止命令を出したとみられる。 日本側は昨年11月、石破首相がバイデン大統領に書簡を送り、買収計画の承認を求めた。ただ、次期大統領であるトランプ氏と対面で接触できないなど石破政権には外交上の懸念も浮上している。 経済安全保障アナリストの平井宏治氏は「日本政府は書簡を送るだけではなく、外交で前面に出たり、日鉄へのアドバイスを通じて関与する方法も考えられた。米政府のファンドに日鉄の株を一定数持たせ、そこに米国の役員を入れるなど、米国側が納得できる案もあったのではないか。石破首相がトランプ氏と対面できない上、中国寄りとみられる姿勢も影響しているかもしれない。今後、米国と交渉するには『親中』ではないことを旗幟(きし)鮮明にする必要がある」と語った。