娘の進路を狭めるのは親の偏見!? 「女の子は数学が苦手」は本当か #性のギモン
親のジェンダーバイアスが娘の理系進学を妨げる
横山さんは、「女性は家を守るという役割があるから優秀でなくていい、むしろとがった優秀さは男性を脅かすものとして嫌われるという遅れたジェンダー観が社会に残り続けていることで、社会人である親自身がジェンダーバイアスを内面化していないか」と指摘する。
研究では、日本社会は、「論理的思考力や計算能力は男性のほうが高い」と思っている傾向が強いことがわかっている。 「悪気なく、『女子は男子より数学が苦手』というジェンダーバイアスを持っている親は少なくないのです。そういったバイアスを私たちは『数学ステレオタイプ』と呼んでいますが、親の数学ステレオタイプによっても理系への進学が左右されることがわかっています」
「女性は男性に比べて数学的能力が低い」と思っている親は少ないものの、そう思う母親の娘ほど理系進学率は低く、そう思わないと回答した母親の娘ほど理系分野を専攻している傾向が強いという結果が出ている。
また、理系分野に限らず、親のジェンダー平等意識は大学進学全般にも影響するという研究結果もある。 「ジェンダー平等意識を測るセスラ-エスという指標を使って、親のジェンダー平等意識と娘の大学進学の関係性を調べたのですが、平等意識の低い親ほど進学全般を支援しない傾向にあることがわかりました。平等意識の高い親ほど、文系理系を問わず比較的、大学進学を応援する傾向が強いという結果が出ています」 親のジェンダー観が子どもの学習意欲や進学意欲に影響を及ぼすことから、「『男の子だから』『女の子だから』といった性別役割分担意識を子どもたちに引き継がせないことが大切」と横山さん。 「そして、女子生徒には『数学や物理はやればできるから怖がらずに勉強を続けてね』という支援する声かけが重要です。工学部受験の多くは数学と物理が基礎になりますが、女子生徒の多くは中学で数学や物理などを嫌いになる傾向があることもわかっています。この時期をどう乗り越えるかが、高校での文理選択にも大きな影響を与えます」