娘の進路を狭めるのは親の偏見!? 「女の子は数学が苦手」は本当か #性のギモン
横山さんらの研究では、「性役割についての社会風土」が数学・物理学の男性的イメージに関わっているとわかっており、これまで知られていた3つの要因(分野の男性的カルチャー、幼少時の経験、自己効力感の男女差)に加えられた。 日本では、女性が知的ではないほうがいいと思う人ほど数学の男性的イメージが強く、イギリスでは特定の分野に進学すると異性からモテないと聞いたことがある人ほど数学と物理学の男性的イメージが強い、という結果が出たそうだ。 さらに、このモデルでは「分野の男性的カルチャー」が物理と数学の男性的イメージに強いインパクトを持つことが確認されている。中でも職業のイメージや、女子は男子より数学が苦手という「数学ステレオタイプ」が最も強い影響力を持っているという。
また、「高校生と母親調査,2012(2012年高校生と母親調査研究会)」のデータを用いた調査では、「『男は外で働き、女は家庭を守るべきである』についてどう思うか?」という質問に対し、男子学生のほうが女子学生の2倍以上も「そう思う」と支持している結果が出ている。 横山さんらはこの調査結果をもとに、高校生が理系に進学するか否かを解析。すると、「男は外で働き、女は家庭を守るべきである」という考えに「どちらともいえない」「そう思わない」と回答した生徒のほうが、支持する生徒に比べて理系進学を希望することがわかった。
優秀さは男性のものという社会風土の背景には何があるのだろうか。 横山さんは、高度経済成長期に確立された「父はサラリーマンで母は専業主婦」という家庭モデルからの脱却がされていないことがあると考える。共働き家庭が増えているとはいえ、夫の家事関連時間は妻の4分の1(総務省「令和3年社会生活基本調査」)であり、平等化が進んでいないことはたびたび指摘されている。 「専業主婦の扶養控除など、社会の制度を見てもいまだ女性が家にいることを前提としたモデルのまま。共働きでさえ、家を守るのは女性という性別役割分業が定着し続けていることで、女性が男性と同じように機会を得ていく改革が遅れてしまったと見ています。諸外国がここ30年ほどで共働きで家事・育児を負担し合うことを学んでいくなか、日本は波に乗り切れなかった側面があるのではないでしょうか」