どんな家具が「良いデザイン」といえるのか?目利きデザインジャーリストが厳選する「未来の名作家具」4選|これからの時代の物選びの基準も解説
アイテム:「ロッキングチェア」
<デザイナー>:ミュラー・ヴァン・セヴェレン <ブランド>:ヴァレリー オブジェクト 【足すことも引くこともできない、簡潔なラインの調和】 ベルギーの2人組、ミュラー・ヴァン・セヴェレンは、スチールのフレームとレザーを組み合わせた家具シリーズを2010年代初めから発表して注目を集めました。それらは形も素材も純粋で無駄がなく、また意表を突く色彩感覚も大きな特徴です。 このロッキングチェアは、アームを兼ねる左右のフレームや、シートと脚部の曲線のバランスなど、まさに秀逸。何かを足すことも引くことも考えにくい形ですが、ミニマリズムの枠を超えた自由さもあります。 「ロッキングチェア」W600×D810×H650・SH355㎜ 問い合わせ先/シボネ
アイテム:フロアランプ「パーラメント」
<デザイナー>:ル・コルビュジエ <ブランド>:ネモ 【明確な機能を反映している匿名性の高いデザイン】 建築界の巨匠ル・コルビュジエというと1920年代に発表した鋼管製の家具シリーズが名作として知られています。しかしこちらは50年代、インドのチャンディガールの都市計画に際して製作された、二方向に光を放つフロアランプ。 時代のアイコンではなく、場の必要性から発想された匿名性の高いデザインです。 一方を住空間に向け、一方を壁に向けて間接光をつくるような使い方ができ、現代においても役立つシーンは多いでしょう。 支柱のグレーは彼が生涯、多用した色。2015年に復刻されました。 フロアランプ「パーラメント」W260×D394×H1830㎜ 問い合わせ先/YAMAGIWA
アイテム:スツール「ゴー」
<デザイナー>:二俣公一 <ブランド>:E&Y 【靴を履く動作に基づいた純粋にして本質的な形】 小ぶりな座面とフレームの途中にあるパイプは、ここに座って靴を履き、靴ひもを結ぶという行為のため。 靴用ブラシを置くトレイを座面の下に備え、ラフに使えるように工具や建築資材に用いられるユニクロメッキで仕上げています。 スツール「ゴー」W250×D398×H450㎜ 問い合わせ先/E&Y ひとつの目的を追求して生まれた形態は、汎用性は乏しいとしても、いつまでも廃れないものを感じさせます。 二俣公一は建築やインテリアも手掛けるデザイナーで、その実力が海外でも認められています。
こうしてデザインのプロの解説を受けると、ものの見え方が少し変わってくるのではないでしょうか。 次回以降も「未来の名作」の基準を上げながら、さまざまなプロダクトを紹介していきます。 Profile 土田貴宏 つちだ たかひろ/デザインジャーナリスト、 ライター。20年以上にわたって国内外で取材・リサーチを行い、デザインに関する執筆、講演、展覧会のキュレーションなど多方面で活躍する。 著書に『デザインの現在 コンテンポラリーデザイン・インタビューズ』(PRINT & BUILD)。 2024年にはデザイン誌「Ilmm」を企画・創刊した。