激しさ増す線状降水帯の〝波状攻撃〟、2018年の西日本豪雨は16も発生していた 豪雨災害の被害額は拡大傾向、年間2兆円超えも
一方、九州豪雨は梅雨前線の南側で線状降水帯が多発した形で、雨が狭い範囲に集中した。こうした災害では数時間のうちに中規模以下の河川が氾濫してしまう危険が高まる恐れがあるという。 気象庁は線状降水帯の半日前予測を始めているが、川村教授は「ピンポイントで発生位置を予測する精度に至っていない」と課題を示す。 実際に線状降水帯の予測は難しいとされる。気象庁が発生を知らせるため、「顕著な大雨に関する情報」の発表を始めたのは2021年6月。翌22年6月には避難準備に役立ててもらおうと、約12~6時間前に発生可能性を伝える半日前予測を開始した。 今年5月には、発生の最大30分前に直前予測を出す運用も始まった。少しでも早く危険度の高まりを知らせるためで、実際の線状降水帯の発生をほぼリアルタイムで伝える。2026年からはさらに確度を高め、2~3時間前には発生予測を出すことを目指している。 ▽年々拡大傾向、水害の被害額は20年間で12兆円
集中豪雨による被害の頻発化、深刻化はデータからも示唆される。国土交通省が毎年公表する「水害統計」によると、2001~20年の過去20年間で水害被害額は計約12兆円に及んでいる。共同通信が、豪雨災害が発生しやすい6~10月に起きた主要60災害に絞って集計したところ、被害額は計約10兆円となり、2011年以降の10年間の被害額合計はそれ以前の10年間の1・9倍となったことが分かった。 被害規模は年々拡大傾向にあるとみられ、2019年にはこの時期の年間被害額が初めて2兆円を超えた。19年度の税収が58兆円余りなので、豪雨災害による被害額が3%強を占めている計算になる。 水害統計は、洪水や土石流などの水害で発生した家屋や建物、道路や堤防などのインフラ、農作物被害の他、経済活動の中断による損失額を毎年集計。被害が生じた要因も分析している。 災害ごとの被害額トップは、2019年10月に関東に上陸した台風19号(別名「東日本台風」 1兆8800億円)だ。次いで2018年7月の西日本豪雨(1兆2200億円)、2004年10月の台風23号(7700億円)、2020年7月の九州豪雨(5500億円)と続く。