激しさ増す線状降水帯の〝波状攻撃〟、2018年の西日本豪雨は16も発生していた 豪雨災害の被害額は拡大傾向、年間2兆円超えも
▽45年間で集中豪雨は2倍強、7月に限ると3・8倍に もう少し長期のスパンで見た場合はどうだろうか。まだ線状降水帯の言葉が使われていなかった時分にまでさかのぼるデータがある。気象研究所による別の研究(加藤輝之氏)は、1976~2020年の45年間で、線状降水帯を含む3時間降水量130ミリ以上の集中豪雨の発生頻度を比較している。 この長期的傾向を見ると、集中豪雨を記録したアメダス地点の割合は、1976年ごろは1年間で1300のうち30台前半にとどまっていたのが、2020年ごろになると70近くへと2倍強に増加。特に7月の発生割合は約3・8倍に達することが明らかになった。 データからも目に見えて増えている集中豪雨だが、引き起こされる災害のタイプはさまざまだ。18年の西日本豪雨では、線状降水帯が広範なエリアに多数発生した。しかし、発生がなかった岡山県でも河川が相次ぎ氾濫、住宅街が浸水する甚大な被害が出た。実は中国地方では2~3日間で過去最大の雨量を記録した地点が多数あった。
気象研究所によると、総雨量に対する線状降水帯由来の雨量の割合(寄与率)は、50%を超えたエリアが少なかった。線状降水帯の出現時間は短く、停滞性も弱かったためという。 一方、四国で1800ミリ、東海地方で1200ミリを超える地点が出るなど、総雨量が1982年以降の豪雨災害の中でも極めて大きく、普段は少雨の瀬戸内地方も含めて広範囲に降った。線状降水帯の基準には達しないものの48時間、72時間雨量が記録的に多い地域が点在。連日か1日おきに土砂降りの雨が襲っていた。 一方、球磨川や筑後川が氾濫した2020年7月の九州豪雨は降り方のタイプが異なる。普段雨が多い九州で降水量が多く、線状降水帯の寄与率が高いエリアも多かった。中には寄与率が80%近い地点もあった。 九州大の川村隆一教授(気象学)は「どちらのタイプの災害も危険であることに変わりはない」と強調した上で「西日本豪雨は長雨により普段降水量が少ない地域にダメージを与えた。数日間にわたる雨の継続には大規模な大気循環の関与が考えられるため、比較的予測しやすく、警戒を強められる」と解説する。