激しさ増す線状降水帯の〝波状攻撃〟、2018年の西日本豪雨は16も発生していた 豪雨災害の被害額は拡大傾向、年間2兆円超えも
繰り返される集中豪雨。今年も6月下旬から7月中旬にかけ、九州や中国地方、北陸や東北地方の日本海側で猛威を振るった。地球温暖化が加速し、記録的な熱波や“ヒートドーム”現象による干ばつ、豪雨による突発的な水害が世界各地を襲う。日本でも毎年のように集中豪雨による土砂災害や河川の氾濫に見舞われており、こうした光景はもはや日常になりつつある。 集中豪雨が報じられる際、必ずといっていいほど出てくるようになった言葉が「線状降水帯」だ。その発生頻度やエリアを分析すると、全国各地で頻発する豪雨災害の実像が浮かび上がってきた。(共同通信=河添結日、小林知史) ▽12年間で300超の線状降水帯が発生 気象庁気象研究所(茨城県つくば市)の広川康隆主任研究官(45)は2022年に英語の研究論文を発表した。日本で集中豪雨をもたらす線状降水帯が、2009~20年の12年間で300超発生したことが記されている。
線状降水帯とは、発達した積乱雲が次々と発生して風に流されて線状に連なり、一部のエリアに集中豪雨をもたらす降水域を指す。雨域は長さ50~300キロ、幅20~50キロ程度。海から供給される大量の水蒸気が関係しているとみられ、複雑な地形も影響する。数時間にわたってほぼ同じ場所を通過したり、停滞したりする〝波状攻撃〟で雨が降り続くため、土砂災害や洪水リスクが急激に高まる。 近年起きている豪雨災害に必ずといっていいほど付随して発生する線状降水帯。2014年8月に広島市内で土石流や崖崩れが住宅地を襲い、70人以上が死亡した記録的豪雨以降、頻繁に使われるようになった。 広川氏は研究で、線状降水帯について「3時間降水量が80ミリ以上の線状のエリアが625平方キロ以上で、5時間以上同じ場所に停滞」することを認定の基準とした。3時間降水量が100ミリ以上のエリアが500平方キロ以上とした気象庁の基準とは少し異なる。形状が線状であることは共通している。