インバウンド不動産投資で新たな問題 日本人が知らずに税金を肩代わり!?…制度の不条理「国にとっても損失」豊田真由子が解説
解決策は?
「国外居住者(賃貸人)から所得税を徴収するよりも、国内居住者(賃借人)に源泉徴収して納付してもらう方が、取りやすく、取りっぱぐれのリスクも減る」という税法の発想には確かに合理性があると思いますし、源泉徴収の制度自体は、国内でも広く行われているものです。しかし、今回のケースは、賃貸人が海外居住者であるために、賃借人が被る不利益が格段に大きくなってしまっています。 『法の不知はこれを許さず』というのは、確かにそうなのですが、本件が、当然知っていて然るべき、といえる状況であるかは、疑問があります。また、外国人が日本国内の不動産を購入する動きも、当面続くでしょうから、同様の問題に直面する方が増える一方ということになります。 であるならば、できるだけ日本国民に不利益が生じないように、今回のような仕組みについて、実効的な周知徹底を図るところまでを、国はしっかりとやるべきなのではないかと思います。 そしてやはり、賃借人と直接接する機会のある不動産事業者が、賃借人にきちんと説明してくれることが、最も直接的で効果が高いと思いますので、できれば国のガイドラインのような形で、現場で実行してもらえるようにするとともに、不動産事業者の方々にも、ぜひ積極的なご協力をお願いしたいところです。 オフィスや店舗として物件を借りている方は、国内に多くいらっしゃると思いますので、ぜひこの機会に、「物件の現在の所有者が、海外居住者や外国法人でないか」をご確認いただくとよいのではないか、と思います。 ―――――――――――――――――――――――― 海外からのインバウンドの活況や不動産投資の増加は、日本の経済活性化や日本への理解の促進といった点からは、大変望ましいことです。その一方で、オーバーツーリズムや価格の高騰、今回ご説明した税法上の不利益リスクといった問題も生じています。 それぞれに対して、状況の変化に応じた、臨機応変かつ有効な対策を、官民あわせて、柔軟に考え実行していくことで、ひとつひとつ問題を乗り切っていくことが、今後の日本と日本国民のために、必要かつ大切なことなのではないかと思います。 ◆豊田 真由子 1974年生まれ、千葉県船橋市出身。東京大学法学部を卒業後、厚生労働省に入省。ハーバード大学大学院へ国費留学、理学修士号(公衆衛生学)を取得。 医療、介護、福祉、保育、戦没者援護等、幅広い政策立案を担当し、金融庁にも出向。2009年、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官として、新型インフルエンザパンデミックにWHOとともに対処した。衆議院議員2期、文部科学大臣政務官、オリンピック・パラリンピック大臣政務官などを務めた。
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