インバウンド不動産投資で新たな問題 日本人が知らずに税金を肩代わり!?…制度の不条理「国にとっても損失」豊田真由子が解説
日本国にとっても損失
自分(個人・法人)が借りている不動産の所有者が、どこに居住する人・会社であるか、といったことは、賃借人がコントロールできることではありません。不動産が売買され、所有者が変わることも頻繁に起こっています。こうした自己と関係のない事由により、結果として他人(賃貸人)の分の多額の税負担をせねばならないことになるということは、心情的には、どう考えても不条理なことだと思います。 そして、納得のいかない賃借人がスムーズに支払うとは思えない中で、結果として、日本政府が「多額の所得税を取りっぱぐれてしまう」事態が頻発するとすれば、それは日本国と日本国民にとっても、大きな損失です。海外居住者や外国法人が、投資目的で、日本国内の不動産を買い漁ることで、そうしたリスク自体が増える、ともいえるのかもしれません。
不動産事業者が説明すればよい?
不動産業者(当該不動産の仲介・管理を行う業者)がきちんと賃借人に説明さえすれば、こうした問題は起こらないのではないか、とも思いますが、事はそう簡単ではありません。 なぜなら、不動産事業者自体がこの制度を知らない、という場合もあれば、さらに、知っていたとしても、説明する義務がない、すなわち、不動産事業者が取引で説明義務のある「重要事項説明」(宅地建物取引業法35条)は、当該物件に直接関係する法令上の制限や、解約要件などの取引条件が対象であり、税の納付方法については対象とされていないため、「法律の要件に該当しないことを、不動産事業者に義務付けるのは難しい」ということになるからです。 また、所有者変更の場合は、賃貸借契約は当然に引き継がれることになるので、そもそも不動産事業者が賃借人に対して重要事項等を説明する機会も生じません(借地借家法31条、民法605条)。
国交省HPでの注意喚起
こうした状況について、国土交通省に問題提起申し上げ、本年4月に、消費者向け情報提供として、国交省HPで注意喚起していただくに至りました。 ※「契約前に知っておきたい・トラブル未然防止に役立つお知らせ」の中に、「日本に居住していない方や外国法人が売主・貸主である不動産について、買主・借主が注意すべきこと」として掲載。 しかしながら、一般の方が、わざわざ国交省のHPを確認するということは、通常あまりないと思われ、残念ながら、根本的な解決になっているとはいえません。また、本件に係る税法を改正することは、制度趣旨にかんがみれば、現実的ではないだろうと思います。