【毎日書評】これ以上疲れない戦略を。コミュニケーションを簡潔にする「スマート・シンプル」実践術
人類史上、これほど多くの場所で、これほどの速さで、これほど大量の言葉が吐き出されたことはいまだかつてない。(「INTRODUCTION 言葉のもや」より) 『Simple 「簡潔さ」は最強の戦略である』(ジム・バンデハイ、マイク・アレン、ロイ・シュウォーツ 著、須川綾子 訳、ダイヤモンド社)の著者は、“現代”についてこう指摘しています。 たしかに、そのとおりかもしれません。なにしろ私たちはチャットやメール、SNS、携帯メール、メモ、ビジネス文書などを通じて絶え間なくことばを聞き、眺め、読み、小さなスクリーンでさらに刻々とことばをついばんでいるのですから。 いわば私たちの多くは、ある種の中毒症状に陥っている可能性があるわけです。にもかかわらず人はメールや手紙、メモ、論文、記事、本などを“1980年と同じように”書いている。その結果、使える時間は減り、選択肢は増え、集中力は絶えず乱されている──。 つまり、私たちの誰もが知らず知らずのうちに、とてつもない難題に直面しているということ。では、混乱状態ともいうべきそうした状況下において、重要なことに注目してもらうためにはどうしたらいいのでしょうか。 この問いに対する著者の返答は次のとおり。 コンテンツの消費のされ方に自分を合わせること。自分の理想や、かつて正しかったやり方を押し通してはいけない。 そこで、コミュニケーションの方法をすぐに見直す必要がある。それを実現するのがスマート・シンプルの導入だ。(「INTRODUCTION 言葉のもや」より) スマート・シンプル、すなわち「賢明な簡潔さ」を身につければ、ノイズを払いのけ、もっとも重要なことを伝え、価値ある考えをわかりやすく伝えられるようになるそう。しかも、この思考とコミュニケーションに関するアプローチには「感染力」があるため、周囲にもポジティブな影響を与えられるだろうと著者は述べています。 きょうは、そうした考え方に基づいて書かれた本書の第3部「『簡潔』にする実践術」内の第13章「『仕事』を簡潔にする」に注目してみたいと思います。