【将棋】終局後に異例「かっ飛ばせ」藤井聡太7冠と羽生善治九段「夢の対決」3800人が楽しむ
日本将棋連盟と阪神甲子園球場(兵庫県西宮市)が創立100周年を迎えたことを記念した藤井聡太7冠(竜王、名人、王位、王座、棋王、王将、棋聖=22)と同連盟会長の羽生善治九段(54)の記念対局が8日、甲子園球場の貴賓室で行われ、羽生が勝利した。聖地甲子園での世代を超えた2大スターの「夢の対決」を約3800人の観客が見守った。終局後には「かっ飛ばせー! フ・ジ・イ!」「かっ飛ばせー! ハ~ブ!」の異例の応援コールが送られた。 ◇ ◇ ◇ 2人の天才棋士が「野球の聖地」で相まみえた。対局場所は皇族やVIPの観戦用の貴賓室。初めて甲子園を訪れた藤井は、一望できる景色に驚き、「甲子園に来たことを実感した」。昨年10月には史上初の8大タイトル独占を果たすなど、数々の大舞台を経験してきたが、「100年に1度の対局なので大変緊張した」。“甲子園・初登板”に心を落ち着かせようとした。 数々の名勝負を繰り広げてきた甲子園での将棋の歴史を刻む一戦は、持ち時間各30分の早指し対局。先手の藤井が角換わりからの相早繰り銀を志向。積極的に仕掛けていくと、受けに回った羽生が中盤の要所で勝負手を放ち、逆転した。終局後、藤井は「羽生九段にうまく切り替えされてしまった」と完敗を認めた。羽生は「こういう場所で対局できることはめったにない。いい記念になった」と喜び、「100周年で藤井さんからお祝いをもらった気がした」とメモリアル白星を振り返った。 約3800人の観客は大型ビジョンに映る対局風景や谷川浩司17世名人らによる大盤解説を楽しんだ。 終局後には“サプライズ”が待っていた。大の阪神ファンの谷川がフィナーレで、「両対局者にエールを送りませんか?」と提案。ファンは拍子で応えた。「かっ飛ばせー! フ・ジ・イ!」を3回ずつの応援エールに藤井は「すばらしい応援をいただいて、温かい気持ちになった」と喜び、打席に立ちたくなった? 質問には「バットを持っても飛ばせないかな(笑い)。これからの期待を込めてということだったので、しっかりと頑張っていきたい」。4連覇にあと1勝に迫る竜王戦7番勝負第6局が11日から鹿児島県指宿市で始まる。甲子園エールを胸に大一番に挑む。【松浦隆司】 ◆過去の甲子園球場対局 甲子園球場によると、1948年(昭23)、大山康晴八段(故人、当時)と松田辰雄八段(同)が、グラウンドで人を駒に見立てた「人間将棋」を繰り広げた記録が残っている。約3万5000人が詰めかけたという。甲子園対局は76年ぶり2度目となった。