【有馬記念】レジェンド武豊グランプリ最多5勝へ ドウデュース有終の美へ導く
55歳で史上初5勝目へ-。レジェンド武豊騎手(55)が有馬記念(G1、芝2500メートル、22日=中山)でG1・5勝馬ドウデュース(牡5、友道)を有終の美へ導く。心の支えだった愛馬はラストランで20年ぶり3頭目の「秋古馬3冠」と史上5頭目の連覇に挑戦。自身は年末のグランプリで歴代最多タイの4勝を挙げており、新記録がかかる。 ◇ ◇ ◇ 筋骨隆々の背に乗れば、55歳の肉体が奮い立つ。その走りは筆舌に尽くしがたい。「変な馬」「スピード違反」「乗っていてうれしくなる」-。5歳秋にして覚醒した王者を評するには、冗舌な名手でさえ言葉選びに苦労してきた。38年目の武豊騎手も感嘆する名馬ドウデュースが、ついにラストランを迎える。 「最後なので、不利を受けたりして『あれがなければ…』とならないように、力を出し切りたい」 初陣から3年半にわたって、心の支えとしてきた。ちょうど1年前。天皇賞・秋の当日に右太ももの筋挫傷を負い、辛うじて間に合ったのが有馬記念だった。やっと内出血が引いたばかりの患部に手をやり「ドウデュースがいなかったら(復帰は)来年だったかも。やっぱりリハビリの力の入れようも違う」と思いを口にしていた。 弱音は表に出さなかったが、友人でもある松島正昭オーナーは「(有馬記念当日も)『痛かった』と言っていた」と明かす。執念の復活Vだった。 だからこそ、有終の美を飾りたい。師走のグランプリ4勝は歴代最多タイ。5勝目となれば史上初だ。90年オグリキャップ、06年ディープインパクト、17年キタサンブラック。昨年を除く3勝は、いずれも引退レースに花を添えてきた。 「すごい馬ばかり。(ドウデュースも)そうなればいいね。引退式もあるから。レースになれば影響はないけど『負けたら嫌だな』とか『勝ったら喜んでもらえるな』という気持ちはもちろんある」 20年ぶり3頭目の「秋古馬3冠」もかかっている。「惜しかったね」と振り返るのは99年のスペシャルウィーク。わずか4センチ差でグラスワンダーに屈した。達成したのは00年テイエムオペラオーと04年ゼンノロブロイだけ。「それだけ難しい」という偉業も、底知れぬ相棒となら決して不可能ではない。11日の1週前追い切りでは自ら手綱をとって絶好調キープを確信した。 「ずっと元気。疲れている感じもないし、ダメージもなさそう。最後はいい形で終わりたい。俺は明らかに去年よりいい状態。“右トモ”は完璧」 昨年の主役は今年もますます健在だ。ファンにもレジェンドにも愛されたヒーローが堂々たる走りで花道を突き進む。【太田尚樹】 ◆秋古馬の3冠制覇 同一年の天皇賞・秋→ジャパンC→有馬記念3連勝は、過去に00年テイエムオペラオー、04年ゼンノロブロイの2頭が達成している。同一年の上記3レースをすべて制した内国産馬に対しては2億円の褒賞金が交付される。今年のドウデュースは、史上3頭目の栄誉と“特別ボーナス”が懸かっている。 ◆有馬記念連覇 70年スピードシンボリ、85年シンボリルドルフ、99年グラスワンダー、03年シンボリクリスエスの4頭が達成している。