4階級上の体重だったネリの暴挙に汚された元名王者山中慎介のラストマッチ
試合後、ネリは、「初めて使った減量方法がうまくいかなかった。ファン、山中には申し訳ないことをした」と、計量失格したことを謝罪した後に、「俺は昨日の夜から当日計量のある今日の12時まで食事ができなかった。一回でパスした山中は十分に回復させてきた。フィジカルのメリットは山中にあった」と言った。 いったい、どの口から、こんなことが言えるのだろう。おまけに「今後もバンタムで戦う。また日本に来たい。再び王者になる自信がある」とまでのたまう。 浜田代表は、王者ネリの計量失格が、山中に与えた精神的影響を悔やむ。 「この試合にかけてモチベーションは最高だったが、計量でああいうことがあり、急に緊張とモチベーションが逆の方向へ行ってしまった。24時間で戻ると思っていたが……あれがなかったらと思う」 山中は否定したが、怒りの感情が体を前へ前へと押し出し、冷静に得意の距離から“神の左”を打ち込むことができなかったのかもしれない。 ファンも関係者も納得のいかない“汚された敗戦”である。 山中もメッセージを投げかけたが、ネリのような確信犯的な計量失格選手を、今後、出さないためのルール作りは必要である。本田明彦会長は、「計量失格に対するペナルティが出場停止6か月から9か月しかないのはどうか、という話をWBCともしている。もっとルール化をしっかりすべきだろう」という。 村田諒太は、「計量失格で興行ができないなら民事訴訟を起こせるなどのシステムを考えないと」という意見。国内の世界戦を統括するJBCも含めて、計量失格選手に対する厳罰化を進めなければ、また“第二のネリ”が出てくるのかもしれない。体重差があまりに大きいと事故に発展する危険性さえあるのだ。 山中は、それ以上、何も言わなかった。実に、さわやかに。 「自分が打たれ弱かった。倒れすぎた。万全で仕上げてこれたし、いい状態でリングに上がった。前回よりは、正直、試合だけに関して言うと、こうすれば良かったという悔いはない。早いラウンド(でのTKO負け)ではありましたが、まあ、納得はしていますよ」 そして現役引退を表明した。 「これが最後ですよ、これで終わりですよ」 この試合が、ラストマッチのつもりでリングに上がったのか? 「今後については、まったく考えないようにしていました。考えると実力が落ちる気がして。それが嫌だったんで。はっきりと(最後だと)決める感じではなかった。何も考えずにきました」