ロジスティードの「アルプス物流・高値づかみ買収」の真意、宅配便大手のヤマトHDは2次入札で途中敗退
アメリカの投資ファンドKKR傘下の物流大手・ロジスティード(旧・日立物流)は5月9日、中堅物流会社のアルプス物流をTOB(株式公開買い付け)によって子会社化すると発表した。TOBは8月中旬頃から開始の予定で、アルプス物流は上場廃止となる。 【アルプス物流の株価】2月末までは2000円を下回っていた株をロジスティードは5774円で買う 電子部品と車載電装品などを主要貨物とするアルプス物流は2023年10月、親会社のアルプスアルパインから株式売却を含む資本関係の見直しを打診された。新たな資本提携先を絞るために行われた入札には、複数の物流会社や投資ファンドが関心を示していた。
その中で他社を圧倒する価格で入札を制したのがロジスティードだった。勝敗を分けたのはアルプス物流の抱える人手や物流網のみならず、倉庫や配送センターといった「不動産」への評価と見られる。 ■買収プレミアムは約70% 「価格が高すぎる」。ある物流大手の幹部は、ロジスティードが提示した買収額に仰天した。 昨年12月に行われた1次入札には事業会社やファンドなど15社が参加。うち11社が意向表明書を提出し、ロジスティードを含む3社が2次入札に進んだ。その後、買収額などの調整を経て、今年4月にロジスティードに内定した。
ロジスティードによる買収額は約1051億円。買い付け価格である1株5774円は、5月8日にロジスティードによるTOBの観測記事が出される前の株価に対して約70%ものプレミアムが付与されている。直近の業績から逆算したPER(株価収益率)は57倍と、ほかの物流会社の株価水準と比べても突出している。 そもそも、今年2月にアルプスアルパインが株を売却する意向と報道される以前、株価は2000円を下回る推移だった。異次元のプレミアムといっていいだろう。
高値づかみにも映る買収劇のカギを握るのは、アルプス物流が抱える「不動産」だ。 同社は全国各地に物流施設を保有し、2023年3月末時点での土地の簿価は180億円。古くから稼働する営業所も多い。物流事業のシナジーだけならあまりに割高だが、含み益を勘案すれば、単なる物流会社を超える企業価値が眠る。 物流施設の含み益を実現させた取引は、ロジスティード自身に実績がある。 今年2月、同社は全国の物流施設33物件を、上場REIT(不動産投資信託)の産業ファンド投資法人などに売却すると発表した。金額は2000億円超となる。ロジスティードはリースバックによって施設を使用し続ける。