みんなが婦人科を受診する理由は?【女性医療現場のリアル】
◇介護と更年期乗り越えた7年間
Bさんは約7年間にわたり、木曜日の仕事後に定期的に通院しています。木曜日が近づくと、私も「Bさんが来る日だな」と頭に浮かぶほど、彼女の通院日として定着しています。 Bさんは医療関係の仕事をしていて、日々多忙な生活を送っています。肩凝りや目の疲れ、寝不足といった悩みを抱えながらも、常にきちんとしている印象です。一方で、親の介護や家族のみとりといったつらい経験も経て、現在は更年期を迎えています。特に、お母さまをみとった後は不眠に悩まされることが多くなったそうです。親しい家族の喪失体験が心身に影響を及ぼすのは当然です。そうした状況にあっても、ゆっくりと乗り越えようとしているBさんの姿には学ぶべきことが多々あります。 彼女は「睡眠剤には頼りたくない」と強く思っているため、プラセンタ注射を月に2~3回受け、漢方薬も飲んでいます。とはいえ、夜中に目が覚め、亡き母の形見となった睡眠剤を飲む場合もあると聞き、心を深く動かされました。過去の思い出と向き合いながら自分の健康を維持するために努力しているのです。 「しんどくても、今しかできないことは全力でやる」と前向きに日々を過ごす姿勢は、周囲の人々にとっても励みとなるでしょう。Bさんのように、困難な状況に直面しながらも自分を大切にし、前を向いて進む大切さを多くの人に伝えていきたいと感じます。
◇女性の体は十人十色!ケア不要の場合も
女性の体は非常に多様で、個々の状態やニーズに応じて異なります。膣(ちつ)周りに触れた際に痛みや違和感がなく、また乾燥も見られない場合、その状態は正常と言えます。このような場合には、特別なケアは基本的に必要ありません。最近では、膣ケアが推奨される風潮が広がっていますが、実際には不要な場合も多く見受けられます。 大切なのは、自分の体の状態をしっかりと理解することです。まず、自分の体の声に耳を傾けましょう。自分自身の体を知れば、必要以上の過剰なケアを避けられます。無理にケアを行うと、逆に体にストレスを与えたり、トラブルを引き起こしたりする原因になりかねません。適切な方法で健康を維持する意識を持ちましょう。 婦人科の受診に抵抗を感じていた方も、少しはハードルが低くなりましたか? 安心して通えるクリニックは、患者さんにとって非常に大切な場所です。私たちはそのためのクリニックづくりに力を入れていくべきだと考えています。院内の雰囲気やスタッフとの相性など、自分が頼りたくなるようなクリニックをぜひ見つけてください。(了)
沢岻美奈子(たくし・みなこ) 琉球大学医学部を卒業後、産婦人科医として25年以上の経歴を持つ。2013年1月、神戸市に女性スタッフだけで乳がん検診を行う沢岻美奈子女性医療クリニックを開院。院長として、乳がんにとどまらず、女性特有の病気の早期発見のための検診を数多く手掛ける。女性のヘルスリテラシー向上に向け、診察室での患者とのやりとりや女性医療の正しい知識をインスタグラムで毎週配信している。 日本産科婦人科学会専門医、女性医学学会認定医、マンモグラフィー読影認定医、乳腺超音波認定医、オーソモレキュラー認定医。漢方茶マイスター。