スマホ全盛期に欲しいコンパクトカメラとは──「ライカD-LUX8」を試す
ライカカメラ社より、新しいデジタルカメラ「ライカD-LUX8」が発売される。GQエディターが試した。 【写真を見る】サンノゼで撮影した作例をチェック
新たなデザインコード
ライカカメラ社から「ライカD-LUX8」の発売日が公開された。7月20日(土)にライカストア、ライカオンラインストアおよびライカ正規特約店で扱われる。ボディカラーはブラックのみ。前モデルが発売されたのが2018年12月で、およそ5年半ぶりの新型となる。スマートフォンに搭載されるカメラが年々進歩する中、なぜ新たにコンパクトデジタルカメラが登場したのだろう? その実力を探るため、取材現場に持参し、試した。 ぼくの場合、フォトグラファーが同行しない取材・撮影では、ミラーレスデジタルカメラを持ち込む。現場では特別な撮影方法でない限りは標準ズームと呼ばれる、f2.8の24-70mmのレンズ1本のみで済ませている。理由は空間全体を撮るのであれば、24mmで必要十分だし、店取材などで置いてある商品や人物全身は35mmが使いやすい。インタビューや人物のカットは50mmから70mmを使う。新しく発表された「ライカ D-LUX8」は固定式レンズで、「ライカDCバリオ・ズミルックス f1.7-2.8/10.9-34mm ASPH.」(焦点距離は35mm判換算で24~75mm相当)を採用している。つまり、明るさや焦点距離だけ見ると普段使いだけでなく取材にもぴったりといえる。重さも397gと軽く、取材時の負担を軽減してくれる。 新型で大幅に変わったのが外観、操作系のユーザーインターフェースを含めたデザインだ。ライカQ3やライカM11、ライカSL3と同様のデザインコードを踏襲し、刷新されている。特にボディのシェイプは顕著。丸みを帯びたコーナーやトップカバーや背面のボタン配列にいたるまで、これまで最新のライカのカメラに触ったことがある人であれば、すぐに慣れるデザインであり、形状になっている。 今回の作例は、6月にアメリカ・クパチーノで開催された「Worldwide Developers Conference 2024」の取材と、サンノゼ周辺の街で撮影した。写真はすべてDNGファイルで記録し、CaptureOneを使い、jpeg形式で現像している。補正は行っていない。 レンズ、2100万画素(有効1,700万画素)の4/3型CMOSセンサーはどちらも前作と同様のスペックだ。前モデルと大きく変わったのは、記録形式にDNGが追加されたことだろう。このファイル形式はRAW形式のひとつで、圧縮を行わずに記録され、高いクオリティを保ったまま現像、レタッチが可能だ。記録やレポートといった記事であれば十分に対応でき、写真編集ソフトを使って修正しても自然に仕上げることができるのは大きなアドバンテージだ。 実際、使ってみて気になった点は、ふたつある。ズームレバーの動きはスムーズだが、35mmや50mmなど狙いたい画角に合わせるのに慣れが必要だ。任意の焦点距離にワンボタンで変えられる機能があるとさらによいと感じた。もうひとつは起動時間だ。コンパクトデジタルカメラの利点はなんといっても機動力だ。実際、起動はたった数秒だが、瞬時に立ち上がることをどうしても期待してしまう。 「ライカ D-LUX8」のビューファインダーを覗き、サンノゼの街並みを撮影していると、自分の隣で他人がスマートフォンを使い、似たような画角で撮影をしているシーンに出くわした。その時、「いいカメラだね」と何度か話しかけられ、その度にぼくは「ありがとう」と返し、なんだかちょっといい気分になった。スマートフォンに高性能カメラが搭載されるのが当たり前の時代に、コンパクトデジタルカメラを選ぶ理由はなんだろう。高額なカメラを購入するとき、「写真が好きだ」「仕事で使いたい」など、人は他人が納得する材料を探しがちだ。しかし「ライカD-LUX8」は、デザインもスペックも他人に言い訳せず、自分が写真を撮って楽しい気分になれるカメラだと思った。 ■ライカ D-LUX8 寸法:W130×H69×D34cm 重さ:約397g/357g(バッテリー有/無) 価格:28万6000円 ■ライカカスタマーケア 0570-055-844 ※火~土曜 10:00~17:00(日・月・祝日、夏季休業、年末年始を除く) https://leica-camera.com/ja-JP
編集と文・岩田桂視(GQ)