BREIMENと令和ロマンが語る、垣根を掻き乱す「生き方」
分析か、感性か?
ー最後にひとつ、テーマを放り込んでもいいですか? 下の世代はそれこそTikTokとかを分析して戦略的にコンテンツを作ることが当たり前という感じになっていて、逆に上の世代はどちらかというと「ミュージシャンが作品作りにおいてマーケティングを考えるのはダサい」みたいな感じがあったと思うんです。その狭間世代でもある気がしていて、「分析」と「感性」のバランスを令和ロマンとBREIMENがそれぞれどう考えているかを聞いてみたいです。 くるま 今の言い方でいうと、俺は逆を当ててますね。上の世代のものに対しては分析してるし、下の世代のものに対しては感性でぶつかってるところがあるかもしれないです。 高木 おもしろ。 くるま 今言われた時に思いました。それこそM-1は上の世代のものなわけじゃないですか。それを「やりたいことをぶつける感性の場」だと言ってるから、下の世代の道具としての「分析」をするし、逆に下の世代のYouTuberの人とコラボする時は、お笑いとして成立させよう、分析的に伸びるための動画を撮ろうとかは考えず、ただ話が合ったやつとゲームしたりしゃべったりするだけと思うようにしているんですよね。僕は自然とそこをチョイスしてました。 ケムリ くるまが「分析してる」というふうに見られていて、「分析してるんだと思ったら笑えない」とか言ってくる人をたまに見るんですけど、分析は全部した方がいいと思うんですよ。 高木 「分析」という字面がちょっとアレなだけで……。 ケムリ そうですね、「考える」っていう。 高木 そう、考えるということはしますよね。俺だったら、たとえばKing Gnuがちょっと上の世代の友達で、音楽業界で革命的なことをしたと思うし「なんでそうなったんだろう」ということは普通に考えるし。分析した上で、そのやり方やロジックをそのままやるわけではないじゃないですか。分析して「これだったらウケる」ということだけをやっていても楽しくはないから、バランスなのかなと思うんですけど……どんな感じですか? くるま 「売れるための分析」と「ウケるための分析」はまたちょっと違うじゃないですか。「自分にとってよりいい音楽になるための分析」と「売れるための分析」、2種類あると思ってて。僕らは、分析こそしているんですけど、「売れるため」というより「ウケるため」にやっている。だからある種、上の世代っぽい価値観ではあると思うんですよ。自分にとって幸せになるための解析をしてるだけという感じかもしれないですね。 高木 俺もかなり同じです。むしろ「売れるための分析」が苦手で。世で売れているものを聴いても、自分の感覚が乖離しすぎてるなと思って。4月に出すアルバムでメジャーデビューになるんですけど、そのタイミングでソニー・ミュージックと関わるようになって、売れるための分析はチームに任せちゃってるかも。曲を作る時に「売れるため」を考えちゃうと、俺は筆が動かなくて。だから分けて考えているんですけど、そもそもやっていることがポップスの範囲に入っているとは思うから。そうやって人を頼ってバランスを作ってる感じかもしれないですね。 くるま でもそれがいいバランスですよね。お笑いは、売り出すプロデューサーみたいな人がいないんですよ。 ケムリ 芸人がやるしかない。 くるま そうそう。吉本は劇場を運営する会社であって、マネージャーさんもスケジュールを管理する仕事であって、プロモーションをする人がいないんですよ。 高木 ディレクターみたいな人もいないのか。 くるま お笑いの業界にはいないんですよ。「売れさせてもらった人」なんていないので。 ケムリ 劇場も売れた人を出す場所みたいなところがあるので。 くるま 本当は自分で売れるためのことを考えなきゃいけないんですけど。でもそうか、その代わりにM-1とかの賞レースがあって、考えることを排除して乗っていればいいから楽なのか。 ケムリ 面白さの分析だけでいいというね。 高木 M-1で順位が出ることで成り立っている部分はあるのかもしれないですね。音楽の場合、どこからが「売れた」なのかがすごく曖昧なので。 ケムリ 音楽は「売れてる音楽はクソ」みたいな空気も別であるじゃないですか。お笑いにはありえない。 くるま ありえないもんな。音楽は人間に近すぎるんですよ。芸術全般的に心とか人間との距離感で曖昧さが決まると思っていて。ニュアンスが多くて体系化ができないから、「こうしてこうしたら売れるから」みたいなものがないんですよね。お笑いもまあまあ人間の根幹に近いんですけど、音楽の場合はもっと、国境も越えられるし、構成要素も多いし、自分の肌のリズムみたいなものってかなり体に近すぎて。絵、彫刻とかはもっと遠いんですよ。 ケムリ お笑いは「笑う」という一個の感情にフォーカスしてるから、笑いで返ってくるし。でも音楽は悲しい曲も楽しい曲もあるから。 高木 それはそうですね。盛り上がってるライブが必ずしもいいわけではなくて。めっちゃ沁みてる時って別に盛り上がりはしない。音楽はジャッジ基準がたくさんありますよね。 ケムリ 音楽も「楽しい曲を演奏する人たちの大会」とかはできるんじゃないですか。どの曲が一番楽しかったか。 くるま 確かにね。それはもしかしたら見てみたいかもしれないですね。お笑いも、本も、全部、比べるのがナンセンスなことをわかった上でやってるから、音楽もやっていったら何かになるのかもしれないですよね。それでいて音楽は単純に楽器が上手い下手とか、アスリート的な部分もあって……本当に難しい世界ですね。 高木 二人と会ってみて、比べられる前提であることに腹を括っていることをすごく感じました。賞レースに出てたし、しかも優勝しているし。そこまでの葛藤とか色々あっても結果を出せていて、それって何にも変えがたいし、説得力になりますよね。本質的にいいと自分たちで思っていても、結果を何かに紐付けないと行けない場所があると思う。いざチャンピオンを目の前にすると、そこの覚悟がすごいなと思いました。優勝した直後のタイミングで言っちゃうとすごく嫌らしいですけど……普通に友達になりたいです。本当に呼べてよかったです。ありがとうございました!(※編集部注:このあと3人はLINE交換してました) New Single 『Rolling Stone』 BREIMEN 発売日:2025年2月12日(水) 収録楽曲 1. Rolling Stone 2. Bowling Star 3. Rolling Stone(Anime Version) 4. Rolling Stone(Instrumental) 5. Bowling Star(Instrumental) 『漫才過剰考察』 著:髙比良くるま 辰巳出版 発売中
Yukako Yajima