あのヤマハ発動機なのにゆっくり走るクルマ「グリーン・スロー・モビリティ」とは?観光や交通困難地域を小型EVでサポート
グリーン・スロー・モビリティの活用は交通困難地域と観光地
典型的な運用実績のパターンとしては、交通困難な地域での採用や、観光地での採用がある。 前者は、特に坂道が多いような地域で、お年寄りなどが買い物に出かけるだけでも難しかったのが、グリーン・スロー・モビリティのお陰で便利に生活できるようになっているという。 また、単に便利になっただけでなく、千葉大学により、グリーン・スロー・モビリティが健康寿命を伸ばす効果があるという研究も行われている。静かにゆっくりと走ることにより、乗員同士のコミュニケーションのみならず、すれ違う人とも挨拶やちょっとした会話が生まれることからだという。 結果として1歳の若返りの可能性が予想され、医療費や介護費用の行政への負担を減らすことができるという試算も具体的な数値を今現在研究中だという。 また、福井県永平寺町では、遠隔監視式の自動運転も行われている実績もある。 そして、後者の観光地で主に周遊に供される場合は、一般車両が入りにくい、あるいは制限したい地域で運用されている。 もちろん、名所旧跡などを景色を楽しみながら移動の手段としてグリーン・スロー・モビリティを活用するのもいいが、担当するヤマハ発動機の岩田浩嗣さんによると、今後は飲食やそれらを購入できる場所などを訪ねながら移動も楽しむといった新たな可能性を模索しているという。 これまでは、何かが困難な地域でそれを克服する移動の用途で使われることが多かったグリーン・スロー・モビリティだが、今後は積極的に楽しむための移動用途もありだということだ。 困っている人を助ける道具を考えるだけでなく、それを楽しめるものに昇華させる、いかにもヤマハらしい発想がここにも生かされているのだな、と感じた。
小林和久