フライング・ロータス緊急独占取材 ダンサブルな最新EP、坂本龍一との秘蔵コラボを語る
坂本龍一との秘蔵コラボ、この先に控える「新しいサウンド」
『Spirit Box』は、フライング・ロータスが前回のリリース以降に取り組んできた音楽のほんの一部に過ぎない。その中には、このEPとはまったく異なるサウンドも含まれている。 「僕はつねに何かを作っているけど、今ようやく、自分自身に追いつくことに集中できる場所にいるような気がするんだ」と彼は言う。「今作っているのは、超狂っていて騒々しくて速いテンポのもの。そういうものをやることもあるけど、今はこれも伝えたかった。僕にとって、このEPの曲には一撃で仕留めてしまうようなヴァイブがある。まずはこれを届けてから、その後に本当にクレイジーなものをぶつけるかもしれないよ」。 彼の秘蔵プロジェクトには、「約2年前から」ほぼ完成している未発表のフルアルバムが含まれており、そこには2023年3月に他界した日本の作曲家、故・坂本龍一とのコラボレーションも収録されている。「適切な時期が来たら、いつか必ずリリースするつもりだよ」と彼は言う。「このアルバムに取り組んでいて、かなり完成に近づいていたんだけど、この曲をミキシングしている最中に坂本さんが亡くなってしまったんだ。それから、完成させることがより重荷に感じられてしまって。でも、またすぐに作業に戻って、今度こそ完成させられると思うよ」。 詳しくは話せない、別のプロジェクトも宙に浮いている。「しばらくの間マーベル映画に関わっていたんだけど、上手くいかなくてね」と彼は言う。「彼らもすぐには解決できないと思うよ」(具体的なことは何も言わないが、長らく延期され、最近棚上げされてしまったマハーシャラ・アリ主演の『ブレイド』リブート版の話をしていることは想像に難くない)。 長らく温めてきたプロジェクトのひとつが、アーロン・ポールとエイザ・ゴンザレス主演の長編SFスリラー『Ash』で、彼が監督を務めている。この映画は今春撮影が終了し、来年公開される予定になっている。「この作品には3年の歳月を費やしたんだ」と彼は言う。「クリエイティブな面では、これまででいちばん難しかった。今の僕には挑戦が必要だったんだ」。 映画の撮影現場での仕事は、自宅のスタジオでトラックを作ることとはまったく異なる、そう彼は付け加える。「すべてのことが同時進行で起こっている。煙が立ち上り、俳優たちが演技をし、誰もが素晴らしい見た目をしていて、照明が点き、閃光が走り、マイクのブームが飛び交う……すべてのアイデアと壮大なコラボレーションが実現する瞬間を目の当たりにした時、最高にやりがいを感じるんだ」。 とはいえ、彼が音楽より映画を選んだと思っている人に対して、それが誤解であることははっきりさせたいようだ。「そんなふうにはならない」。彼は言う。「音楽は僕の教会で、頻繁に顔を出さなければならないからね」。 それを念頭に置いて、彼はすぐにでも、より多くの新しいサウンドを発表することを決意している。「僕が抱えている大きな問題は、思考という部分なんだ。だから、マネージメントやWarpには、『よぉ、考えるのはやめて、今は音楽づくりだけしようぜ』って言ってるんだ。だって、久しぶり過ぎたからね。僕のコンピュータを見れば、僕がずっととても忙しかったのが分かると思う。そうした作品をすぐにでも世に出したいと思っているんだ。もう長い休みはいらないよ」。
Simon Vozick-Levinson