中学の時に突然父を亡くし…その後、母は車いす生活に『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』自身の体験を力強くそして面白く発信していく理由とは
依存する先を外で増やすこと
祖母が認知症になり、母が病気で入院したとき、奈美さんは「戦略的一家離散」をテーマにあげました。 離散というとネガティブな印象がありますが、奈美さんの考えは「離散=自立」だといいます。自立は金銭的なことではなく「依存する先を外で増やすこと」でした。 これまで家族は家族の中だけで信頼し合って絆を作って、支え合って生きていくという考えを持っていましたが、家族に頼っていると安心して他人への頼り方を忘れてしまうといいます。 そこで奈美さんは仕事に集中するためにも、一人暮らしをする決断をしました。また弟はグループホームで知的障害のある方と暮らし、祖母は認知症の人の施設で暮らし、母は実家から離れた場所に仕事場を借りたといいます。 「優しくしたり愛したりするのって、自分の心に余裕がないと絶対にできないんです。愛するということは四六時中一緒にいて責任をもって受け入れるのではなく、自分も相手も心の余裕を持てる距離を探ることだと思います」 それは奈美さんの考える「家族を愛する工夫」のひとつでした。 家族という確固たる味方がいるからこそ、あえて外で味方を作り家族の外でそれぞれ自立することが大切だと考えた奈美さん。 「それぞれの場所でそれぞれの味方を作ろう。人に頼る練習をしよう。家族以外に弱音を吐いて家族以外の人で味方を作ることを、家族それぞれやろう。そしたら誰かが倒れても死んでも生きていけるようになるから」 とくに弟は慣れない場所だったので不安で戸惑ったようですが、これまでと全然別の友達を作ったり仲良くなったりして、家族が汲み取ってあげるしかなかったつらいことや、苦しいことを自分の言葉で話せるようになったといいます。 「痛みや寂しさも最初はつきもの。でも、家族という確固たる味方の場所があるからこそ外で思い切ったことができ、自分の幸せを追い求めることができるんだと思います」 そして週末は家族で集まって愚痴を言い合ったり、励まし合ったりする。 「遠くにいたとしても、関わろうとしてくれる”圧倒的味方”ということを自分の自信にしていく」これが奈美さんの考える「自立」なのです。 それぞれがそうした行動をしていく中で、切羽詰まったりトラブルに巻き込まれたりしていく中で面白かったことなどを奈美さんはエッセイにして読者におすそわけをしていると話していました。