“銀パソ”ブームの火付け役。PCブランド「VAIO」26年の歴史を振り返る
【2015年】VAIO株式会社になって最初の「VAIO Z」
それまでに先進的なモデルをいくつもリリースしてきた反面、当時のソニーのPC部門としては赤字が続いていました。こうした背景もあり、2014年には、ソニーからPC部門を切り離すような形でVAIO株式会社が設立されることに――。株式の過半数は、日本産業パートナーズ(JIP)が保有する形となりました。 こうした経営体制の変化に伴って、ソニー時代には1000人を超える規模だった社員は、新会社では240人ほどの規模へと縮小します。設立当初のVAIOは、ハイパフォーマンスなモバイルノートPCを中心としたノートPCの開発に注力するよう、舵を切っていくことになりました。 「当時、『VAIO』は既にグローバルで知られるブランドになっていました。そのブランドの行く末を、小さなチームで決めていくとなったことで、ワクワクもしましたし、より一人ひとりに責任が課された気がしましたね。それに伴ってチームの連帯感も高まっていたと思います」(黒崎氏) 「ソニーの頃は、VAIOに関わる人数もリリースされる商品数もとても多かったので、言ってしまえば社員なのに“知らないうちに世に出ていく商品”というのもありました。しかし、VAIO株式会社として独立してからは、そういう商品はありません。また、日本市場に出す製品については、長野県の安曇野にある工場で最終チェックを行う“安曇野FINISH”と呼ぶ検査工程も確立しまして、もう一度信頼を立て直そうとしていました」(巢山氏) そんな新生VAIO最初の製品となったのが、2015年に発売された「VAIO Z」でした。 「このとき『VAIO Z』をイチから作り直しました。“PCは生産的な作業に使うものであり、使う人をエンハンスするようなものにしていきたい”と定めたのです。これには、スマートフォンやタブレットが市場に出てきたことで、メディアを消費するデバイスがPCではなくなったという時代背景が大きく影響していました。PCの価値としては、何かを生み出すところにフォーカスしようと考えていました。ちなみに、2 in 1タブレットのスタイルでペンを使えるという“フリップ機構”自体は、ソニー時代の最後に、別のモデルで研究していたものでした」(黒崎氏)