“銀パソ”ブームの火付け役。PCブランド「VAIO」26年の歴史を振り返る
【2010年】ソニー時代の「VAIO Z」
現在のVAIOのラインナップに続くフラッグシップモデルを語るうえで外せないのが、2010年モデルの「VAIO Z」です。 「VAIO Z」シリーズとしては、2003年の「VAIO Z(PCG Z1/P)」、2008年の「VAIO Z(type Z)」なども既にあったため、こちらは第3世代モデルという立ち位置でした。 当時は、デスクトップPCに対するサブとしてのノートPCではなく、ノートPC自体が主役として求められるようになってきた時代。こうした視点で、時代の変化を反映した一台だったとも言えます。 2010年のVAIO Zでは、プロセッサに内蔵されたGPU(iGPU)と、外部のGPU(dGPU)を再起動なしで切り替えられる「ダイナミック・ハイブリッドグラフィックス」機能が新たに採用されたことがポイントでした。 「パフォーマンスを追求したいし、モビリティも追求したい。絶対的なふたつの欲求は、どうしてもぶつかります。これらの両立という課題に真っ向から立ち向かっているのが『VAIO Z』シリーズです。当時のVAIO Zでは、デスクトップPCで使うような大きな電力を必要とするCPUをモバイルPCで使おうとしていましたし、外付けのグラフィックスも搭載していました。さらに、クアッドSSDの4連RAIDという今でもあまりしない構成を採用したくらい、パフォーマンスに振り切っていたモデルだったのです」(黒崎氏) 「当時、iGPUとdGPUの切り替えは、“物理スイッチ”の操作で行う仕組みでした。dGPUを使うと、パフォーマンスが上がるものの、チップがひとつ多く動く分だけ、どうしても電力消費が増えてしまいます。もちろんオートのモードも用意していましたが、ユーザー自身が、作業を早く終わらせたいような場面でパフォーマンス重視で使うか、バッテリーを長持ちさせるかを選べるようにしていました」(巢山氏) 「一応、iGPU/dGPUの切り替え自体は、2008年モデルの『VAIO Z(type Z)』で既に採用していたものでしたが、2010年モデルでは再起動なしで行えるようになったのです。半導体のベンダーがこうした機能を標準化するより先に、こうした仕組みを取り入れたかったという背景もあって、本当に試行錯誤が繰り返されたモデルでした」(黒崎氏)