韓国ヒョンデ、日本で「5年で販売規模10倍」はどうやって?再上陸2年半で1500台、カギは25年投入の小型EV
■ 「IONIQ5」の改良モデルは航続距離アップ 今回の発表会では、改良モデルの実車を公開したほか、新モデル導入についても言及した。 まず、現在の主力モデルである「IONIQ 5」については、商品改良モデルを公開した。最大の特徴は搭載する駆動用電池の容量アップだ。 初代日本仕様では、スタンダード仕様とロングレンジ仕様の2種類があったが、販売のほとんどがロングレンジ仕様だったこともあり、今回は新設定では電池容量を従来のロングレンジ仕様より15%大きい84kWhに統一した。改良モデルは後輪駆動車タイプとAWD(全輪駆動車)タイプがあり、満充電での航続距離は618km(従来のロングレンジ仕様)から703km(後輪駆動車)まで伸びている。 あわせて、モーター出力を5%増の168kW(後輪駆動車)、また最大トルクを6%増(AWD)に引き上げて運動性能を上げた。 ドライビングモードでは、これまでの「ECO」「NORMAL」「SPORT」に加えて「MY DRIVE」を設定して走りのアレンジの幅を広げた。 KONAについては、日本専用車としてアウトドア志向の「Mauna Loa」を全国30台で限定発売する。電池容量は64.8kWh。 Mauna Loaとはハワイで「長い山」を意味する言葉。自然豊かなハワイをイメージし、専用カラーのミラージュグリーンと、バンパーやホイールに艶を抑えたブラック塗装をほどこした。インテリアも国内未導入のセージグリーンを採用している。 さらに、2025年春にはKONAよりもボディサイズの小さい「INSTER」を導入する。ボディ寸法は、全長3825mm×全幅1610mm×全高1575mm、ホイールベース2580mmとなる。
■ 販売10倍増の主要因は「INSTER(インスター)」 INSTERはすでに韓国や欧州では発売済みだが、日本仕様の技術スペックについては今回、未発表だった。日本仕様の価格については「250万~350万円の間で、EVのニーズがあると考えている」(ヒョンデモビリティジャパン関係者)として、戦略的な価格設定を検討している模様だ。 ヒョンデモビリティジャパンが言う「5年間で10倍以上の販売規模」としては当然、実質的なエントリーモデルであるINSTERの比率が高くなることが予測できる。ただし、七五三木マネージングダイレクターは、今後の販売台数目標に対する各モデルの割合については詳しく触れなかった。 その理由について「最高の顧客満足の提供」と「お客様との信頼醸成」を最優先することを繰り返して強調した。 背景には、1度目の日本参入時での学びがある。 2022年2月に日本市場再参入を明らかにした際、ヒョンデ本社の幹部は「かつて日本から撤退した理由は、(販売店を含めた)お客様とのコミュニケーション不足」という見解を示している。合わせて「日本はユーザーがクルマ選びに厳しい目を持っており、自動車メーカーが事業を成功させることが難しい世界屈指の国」とも指摘した。 だからこそ、日本再参入から3年目となる2025年は、ヒョンデとしてのブランド価値を顧客に対して丁寧に分かりやすく訴求することが重要となるだろう。ブランド価値が認められれば、ユーザー側から新たなモデル導入に対する要望や、すでに販売しているモデルに対する改良の要望がヒュンデ側に届くはずだ。 日本市場におけるブランド認知度が育つことをじっくり待つ、という経営手法が今後、どういった結果を生むのか、とても興味深い。 なお、販売体系については今後も、カスタマーエクスペリエンスセンター以外に実店舗として販売拠点は設けず、オンライン販売専業を貫く姿勢をみせた。 桃田 健史(ももた・けんじ) 日米を拠点に世界各国で自動車産業の動向を取材するジャーナリスト。インディ500、NASCARなどのレースにレーサーとしても参戦。ビジネス誌や自動車雑誌での執筆のほか、テレビでレース中継番組の解説なども務める。著書に『エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?』『グーグル、アップルが自動車産業を乗っとる日』など。 ◎Wikipedia
桃田 健史