最高の焼き立てフィナンシェが待っている! フランス菓子界の父のレシピを受け継ぐ、大手町の名パティスリー
お時間に余裕があれば、是非、店内で焼き立てのフィナンシェやクッキーを、そして特製のコーヒーとともにスペシャリテのケーキを味わっていただければと思う。
フランス菓子界の父と呼ばれるガストン・ルノートル氏の功績とは?
近代フランス菓子は、19世紀にアントナン・カレームという天才料理人・菓子職人によって系統的に集大成される。しかし、その後目立った発展はなく20世紀半ばまで大きな変化はなかった。当時のフランス菓子と言えば、しっかりした甘さの重い生地、脂肪分たっぷりのバタークリーム、使われるフルーツも砂糖漬けか、洋酒漬けのものだった。肉体労働が仕事の中心であった時代、お菓子はまさに間食の位置づけ。体を動かすエネルギー源の一つであり、しっかりと満足感が得られる、甘く重厚な味わいを提供することこそがお菓子の役割だった。
戦後の1950年代以降、本格的な工業化の時代が到来し、さまざまな分野で機械化が進む。肉体労働の割合は減少し、以前のようなエネルギー摂取が必要なくなると、重いお菓子は徐々に敬遠されるようになる。
そこに彗星のごとく登場したのが、ガストン・ルノートル氏であった。ノルマンディー出身で良質な乳製品や新鮮な果物に囲まれて育った彼は、お菓子作りに新鮮なフルーツを使い、クリームも軽やかなものに改良。進歩した冷蔵・冷凍技術を使い、ムースやスフレといった口当たりの軽いレシピを次々に開発。時代のニーズにマッチした、瑞々しいフルーツがふんだんに使われた軽やかなケーキ類はたちまち評判となり、人々から高い評価を得た。さらに、新しいレシピだけでなく、セルクル型などの菓子型を用いて冷やし固める手法なども考案し、厨房作業の大幅な合理化・効率化も図った。
1957年に彼が妻と2人でパリに開いた店は大成功を収め、やがてケータリングやレセプション事業にも進出を果たす。しかし、氏の最大の業績は何と言っても、1971年に「エコール・ルノートル」という製菓学校を設立し、自身のレシピや技術を公開し、伝授したことにある。今でもほとんどの店が自店の利益を守るため、レシピや技術の公開には消極的だが、彼は当時最先端だったノウハウを惜しげもなく全て明らかにして、丁寧に教えた。これによりフランス菓子は飛躍的な進歩を遂げる。アントナン・カレーム以来、まさに150年ぶりの大きな変革をもたらしたと言っても過言ではないだろう。