【神宮大会】悲願の日本一まであと2勝 熱血指導者が学生を陣頭指揮する環太平洋大
早大対策は万全
11月23日 神宮 【第55回記念明治神宮野球大会】 ▼2回戦 環太平洋大2x-1早大 (延長10回タイブレーク) 【選手データ】徳山一翔 プロフィール・寸評 第55回記念明治神宮野球大会の4日目(11月23)の第3試合、環太平洋大が早大との2回戦で、延長10回タイブレークで逆転サヨナラ勝ち(2対1)。準優勝だった2018年以来、6年ぶりの4強進出を決めた。 楽天2位指名の左腕・徳山一翔(4年・鳴門渦潮高)が10回1失点完投勝利を挙げた。1点を先制された10回表二死二塁で、2球目を投げた後に顔をゆがめ、左ふくらはぎを押さえた。ストレッチをして続投し、見逃し三振に斬った。試合後には両足がつっていたことを明かした。気迫の135球だった。その裏、味方打線が2点を取って、逆転勝ちした。
環太平洋大・野村昭彦監督は試合後、徳山について言及した。 「(名城大との)1回戦は発熱で……(先発を回避し、救援で4回3安打無失点)。(コンディション不良で登板できなかった)春と同じじゃないか、という話をしたんです。ドラフト2位で指名していただき、それなりの投球をしないといけない。(2回戦は)記憶に残る投球をした。発展途上で、まだまだ良くなっていく。0対0という展開で、心が動かなかったのが良かった。守ろうとするな、1点を惜しむな、と指示しました」 早大対策は万全だった。 「今大会、対戦する可能性のあるチームの映像はすべて見ている。『俺の言うとおりに動いてくれ』『俺を信じろ』と。120パーセント信じてくれないと、チームとして機能しない。就任から3年が経過(13年から18年まで同大学の監督を務め、一時退任も、22年に復帰)。野球を軸に教育してきて、取り組んできたことが、成果として感じられたのは大きい」
生粋の勝負師の血
早大の先発はこの秋、東京六大学リーグ戦で6勝(1敗)のエース・伊藤樹(3年・仙台育英高)。明大との優勝決定戦では3安打完封した、難攻不落の主戦投手だ。野村監督は7回5失点で今季初黒星を喫した慶大1回戦と、明大とのV決定戦の映像を学生たちに見せた。 「何が悪くて、何が変わったかを比較させた」 慶大1回戦で清原正吾(4年・慶應義塾高)、水鳥遥貴(4年・慶應義塾高)が伊藤樹から本塁打を放っているが「ウチの打線だと、スタンドインはできない。ボールの内側をたたいてのライナー」を指示した。1回裏、先頭の主将・猿渡颯(4年・創成館高)が左翼線二塁打。「やってきたことが間違いでなかった」(野村監督)。この回の得点はならなかったが、チームに勇気を与える一打となった。猿渡は1点を追う10回裏には同点の左前打を放ち、計3安打の活躍を見せた。 次戦は創価大との準決勝(11月24日)である。「今日は宿舎に帰って、ご飯を食べて、寝る。明日の朝に対戦相手の話をします。寝る間を惜しんで見てきていますから、信じてほしい」。野村監督は佐伯鶴城高、駒大、日本石油を通じて投手として活躍。引退後は同社コーチを歴任し、駒大コーチを経て、環太平洋大の監督としては冒頭のように18年の明治神宮大会準優勝へと導いている。侍ジャパン大学代表でも2年間の投手コーチ実績がある。兄は広島一筋でNPB通算2020安打を放ち、広島監督も務めた野村謙二郎氏。生粋の勝負師の血が流れている。悲願の日本一まであと2勝。熱血指導者が、学生を陣頭指揮する。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール