「いまは山に妖精や名探偵までいるけど…」箱根駅伝“5区で区間新”青学大・若林宏樹が語った“若乃神”秘話…「最初は何、言ってんだろうと(笑)」
後半は監督の声掛けも「全く記憶が無くて…」
一方で、レースそのものを振り返ると大学生活で最後となる山上りは、これまでで「最もキツかった」と振り返る。 「走っている時はキツすぎてレース後半、全く記憶がなくて。監督からの声掛けもほとんど覚えていないんです。前半に状況の報告と言うか、前後とのタイム差を伝えられていたのは覚えているんですけど。『(最初の3kmで)離されているけど、前が速いだけだから』とかですね。後半は頭が回ってなかったというか、聞こえてなかったです」 その言葉を裏付けるように、レース後は低血糖と低体温で一度は取材を受けられずにテントに引っ込むほどに消耗していた。それだけ精魂を振り絞った激走だった。 「最後は若林が『若乃神、ここに降臨! 』という形で頑張ってくれました」 その走りを、原監督も芦ノ湖でのゴール後には、そんな言葉で労った。 ちなみにその「若乃神」というフレーズ誕生の瞬間は、1年生の箱根山中での声掛けの時だ。冒頭で本人が語ったように、3度の山上りの中でも特に印象に残る記憶なのだという。 「あれで知名度が上がって、ちょっと有名になれた。そういう意味ではあの声掛けは今思えばありがたかったのかな……と思います」
「〇代目」よりも…オンリーワンの第一人者?
それまで5区を好走したランナーには、過去の今井や柏原竜二(東洋大)、神野大地(青学大)らが紡いだ“山の神”の2つ名の継承を求められることが多かった。一方で「○代目」ではなく「オンリーワン」な山職人のニックネームの元祖となったのが若林だった。 良くも悪くも印象に残るフレーズだけに、4年間を通して愛着も出てきたのだろうか。本人も笑いながら「脱・山の神」へのプライド? を覗かせる。 「いまは山には神様だけじゃなくて、“妖精”や“名探偵”まで出てきたので(笑)。でも、その意味では、(脱・山の神の)第一人者として名前をもらえたのは嬉しかったですね」 卒業後は大手保険会社の日本生命に入社し、競技は引退予定だ。 1万mで27分台の記録を持つ大学生ランナーとしては、史上初の決断でもある。関係者にはその才能を惜しむ声も多いが、「根性だけは人一倍あると思っている」と本人が語るように、箱根の山の経験値はきっと卒業後も活きるのだろう。 記録だけでなく、ファンの記憶にも残った「若乃神」の山上り。その雄姿は、今後も多くの人に語り継がれるはずだ。
(「箱根駅伝PRESS」山崎ダイ = 文)
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